本研究の目的は、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法が2027年に期間満了を迎えることを見据え、近年におけるホームレス問題の変容を検討し、“ポスト特別措置法”におけるホームレス支援システムの法的枠組みのあり方を考察することにある。 この20年の間に、住居喪失プロセスの多様化、広義のホームレスの存在など、ホームレス問題をめぐる状況は変化してきている。また、生活困窮者自立支援法の施行、新たな住宅セーフティネット制度の創設など、ホームレス支援に関わる政策動向もめまぐるしく展開する中で、ホームレス問題の変容に対応しうる法的枠組みを検討することが重要な政策課題になっている。 こうした問題意識のもと、本研究では、ホームレスに対する相談支援に取り組む自治体や民間支援団体などの視察、海外の行政機関、支援事業者等に対するヒアリング調査を通じた国際比較を軸にして、①近年におけるホームレスの住居喪失プロセスの特徴、②その特徴を踏まえた“ポスト特別措置法”におけるホームレス支援システムの法的枠組みのあり方を研究課題として設定した。 2023年度は、前年度から継続している国内の地方都市における不安定居住への対応状況を把握するため、金沢市を訪問してヒアリング調査を行った。また、ホームレス支援を進めていくための基盤として、ホームレス支援策の推進に対する人々の支持意識の把握が必要であるとの問題意識のもと、インターネットを利用した意識調査を実施して研究成果を国際学会および海外の研究者とのコロキウムで報告した。 研究期間全体を通じて、ホームレス支援のためには生活保護を中心とする公的支援と支援団体や不動産業者も含めた民間事業者との連携が必要であること、さらにその基盤として一般市民によるホームレス問題への体験的理解を深めながらホームレス支援策への支持を広げていくことが必要になることを明らかにすることができた。
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