研究課題/領域番号 |
20K02321
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
萩原 知明 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (20293095)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不凍タンパク質 / 氷結晶 / 再結晶化 / タマネギ薄皮 / 小麦ドウ |
研究実績の概要 |
本研究は、不凍タンパク質の食品への添加効果を定量的評価することで、不凍タンパク質の最適な使用条件を確立して、不凍タンパク質を利用した凍結食品の高品質化を目指すことを目的としている。食品もしくは食品に近い試料中を用いて、不凍タンパク質の添加効果を確認するため、2020年度は、野菜・果物の植物系食品のモデルとして、タマネギの薄皮組織を、小麦ドウ製品のモデルとして、小麦粉を含んだスクロース溶液を用いた検討を行った。 タマネギ薄皮組織では、Ⅲ型不凍タンパク質を含むリン酸溶液に浸漬することで、細胞内に生じた氷結晶の再結晶化が抑制されていると思われる様子を観察することができた。小麦粉を含んだスクロース溶液では、小麦ドウを添加すると、氷結晶の再結晶化が有意に抑制され、ここにさらにⅢ型不凍タンパク質を添加することで、-10℃での氷結晶の再結晶化抑制効果が有意に増強された。デンプンそのものはむしろ氷結晶の再結晶化を促進するという既往の結果より、小麦ドウに含まれるタンパク質には再結晶化を抑制する効果があること、そして、これらのタンパク質とⅢ型タンパク質が相乗効果により氷結晶の再結晶化を効果的に抑制していることが示唆された。 これまで、不凍タンパク質の再結晶化抑制能に関する多くの研究は、食品とは大きくかけ離れた緩衝液やスクロース溶液で行われていた。前述したように、今年度の結果より、植物系食品ならびに小麦ドウ製品中での氷結晶の再結晶化が不凍タンパク質添加により、有意に抑制されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初ターゲットとしていた食品(植物系食品ならびに小麦ドウ製品)での不凍タンパク質添加効果を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
植物系食品に対しては、不凍タンパク質の添加効果を定量的に評価する手法を開発する。小麦ドウ製品については、不凍タンパク質の効率的な使用方法の確立のため、濃度条件、不凍タンパク質の種類、共存物質といった諸条件の影響の確認とその絵カニズムの解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大のため、研究代表者の勤務する研究機関(東京海洋大学)への入構制限が行われた。実験装置は研究機関に設置されているため、事実上研究実施に支障を生じた。
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