研究課題/領域番号 |
20K02323
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
冬木 春子 静岡大学, 教育学部, 教授 (60321048)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 時間貧困 / 母親 / 就業 / 幼児 / 生活習慣 |
研究実績の概要 |
グローバライゼーションの進展を背景に、「非正規」という就労形態や、早朝や夜間といった「非典型時間帯」での就労が増え、幼児を抱え働く母親が、「時間の貧困」に陥る可能性が想定される。「時間の貧困」とは、石井・浦川(2018)が定義する「家庭生活を送るうえで必要な家事・育児、余暇のための時間が不足する状態」のことである。本研究では、「時間の貧困」に直面している母親の就労環境を探り、その「時間の貧困」が幼児の睡眠、食、遊びといった生活習慣に及ぼす影響を検討することとした。 研究の初年度として、母親の就業が子どもに与える影響に関する理論的枠組を検討した。また、米国の研究のレビューを行い、研究課題を析出した。そこから、①母親の就業特性に親子関係(母子間の共有行動、母子関係の質)がどう影響するか。②母親の脱標準型の勤務スケジュールは子どもの健康や生活にどう影響するか。③母親(父親も)の時間貧困はどう親子関係に影響するかを研究課題として析出した。 また、2013年に行った調査データの再分析を行い、「幼児の間食摂取」と母親の就労との関連を明らかにした。「手作りの間食」を作る頻度と母親の就労との関連を検討したところ、専業主婦(母親)は「毎日・時々」手作りの間食を作っている人が約55%と最も多かったものの、正規職員及びパート・アルバイトの母親でも「毎日・時々」手作りをしている母親は約40~45%であった。両変数の間に統計的に有意な関連は認められなかったことから、母親の仕事の有無、すなわち「時間的余裕」と手作りの間食を作る頻度は関連がなく、「多重役割仮説」が支持されなかった。一方で、母親が幼児の間食にどのような意味づけを与えているかが間食の手作り志向との関連があったことから、親に帯する教育的支援の必要性についても示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度であることから、米国の研究を中心にレビューを行い、研究課題を析出し、研究枠組みを明確化することができた。そこから、①母親の就業特性に親子関係(母子間の共有行動、母子関係の質)がどう影響するか。②母親の脱標準型の勤務スケジュールは子どもの健康や生活にどう影響するか。③母親(父親も)の時間貧困はどう親子関係に影響するかを研究課題として析出した。次年度に行う予定である質問紙調査の実施に向けての準備を行うことができた。 さらに、既存研究のデータ分析も行い、幼児の間食摂取と母親の就労に関する新たな知見をえることができた。また、新型コロナウイルス感染症予防に伴って親子の遊びや情報機器利用がどのように変化しているのかについてもデータ収集し、分析を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、子どもをもつ母親の就業状況と幼児の生活習慣に関する質問紙調査を行い、量的データ分析を通じて全体像を探る予定である。具体的には、①母親の就業特性に親子関係(母子間の共有行動、母子関係の質)がどう影響するか。②母親の脱標準型の勤務スケジュールは子どもの健康や生活にどう影響するか。③母親(父親も)の時間貧困はどう親子関係に影響するかを明らかにしていく。 これらを通して、母親の「時間貧困」が子どもの生活や健康にどのような影響を及ぼしているのかを明確化させ、幼児をもつ親のワーク・ライフ・バランスのあり方について具体的支援策を探究していきたい。また、子どもの健全な発達に資する社会的取り組みについて、米国のNPO活動についての情報収集を行い、子どもの生活習慣形成における社会的支援の具体策についても提言していくつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本家政学会及び日本家族社会学会、日本家族関係学部会への出張が新型コロナウイルス感染症によって取り止めとなったことから、想定していた旅費が未使用になったことによる。また、2019年度に終了予定であった基盤研究(C)(課題番号16K007470001)を2020年度まで延長申請したために、書籍代や消耗品費は延長申請した研究課題の助成金から支払ったために、未使用の金額が増えたことによる。また、勤務校において男女共同参画推進室による研究補佐員の雇用が認められたことによって、想定していた謝金が未使用となったことによる。 次年度はインターネットを用いた質問紙調査を外部機関に委託して行うことを計画していることから、未使用となった助成金を調査及び分析に費やす費用及び調査補助の謝金として用いるつもりである。
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