研究課題/領域番号 |
20K02323
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
冬木 春子 静岡大学, 教育学部, 教授 (60321048)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 母親 / 父親 / 育児 / 就労 / 時間貧困 / 幼児 |
研究実績の概要 |
「社会の24時間化」やグローバライゼーションの進展を背景に、「非正規」という就労形態や、早朝や夜間といった「非典型時間帯」での就労が増え、幼児を抱え母働く親が「時間貧困」に陥る可能性が想定される。そこで、今年度は父親及び母親の就労実態や子育ての状況を明らかにすることとした。 調査地域は静岡県の地方都市として、幼稚園に子ども(2歳~6歳児)を通わせている父親及び母親を対象に質問紙調査を行った。幼稚園児をもつ母親の就労状況として、専業母親が約30%であるものの、パートタイム就労では40%と最も多く、フルタイム就労が10%、自営業等の就労が10%となっていた。幼稚園の「預かり保育」の利用希望者は増加しており、母親の就労意欲は高いことが明らかにされた。 父親の育児遂行においては、「人の迷惑になることを叱る」「してはいけないことを教える」等の規範やルールを教える育児はよく行われている一方で、「子どもの食事の世話」や「子どもの歯磨きの手伝い」等の世話役割はあまり遂行されていない結果となった。このことは、働く母嫌が増えても、従来からの性別役割分業に基づいた親役割が遂行されていることが示唆された。 父親の子育てネットワークでは、子どものことを話し合ったり、相談したり、情報を得たり、遊びに行ったりというネットワークが広く、豊かな人ほど育児に積極的に関わっていた。父親においても、育児をめぐる豊かなネットワークの構築が必要であることが示された。。 母親の育児遂行においては、「絵本の読み聞かせ」を「いつもしている」人が約40%であり、絵本を介した親子の関わりを大切にしていることが読み取れた。子どもの気持ちに寄り添った育児については母親の就労や時間的余裕と関連があるのかは今後検討していくつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始して2年目であり、昨年の文献レビューを踏まえて、静岡県内の地方都市をフィールドとして、幼児をもつ親を対象にした質問紙調査を実施した。ただ、新型コロナウイルス感染拡大により、幼稚園やこども園での調査実施が延期あるいは中止になったこともあり、データ収集が当初より進んでおらず、結果の分析もやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
静岡県内の地方都市をフィールドとして、幼児をもつ親を対象にした質問紙調査を引き続き実施していくつもりである。また、都市部の子育て家庭を対象にした調査も行うことも検討している。 これらの調査を通して量的データの分析を行う予定である。具体的には以下の3点である。①母親の就業特性に親子関係(母子間の共有行動、母子関係の質)がどう影響するか。②母親の脱標準型の勤務スケジュールは子どもの健康や生活にどう影響するか。③母親、父親の時間貧困がどう親子関係に影響するか。 これらを通して、母親の「時間貧困」が子どもの生活や健康にどのような影響を及ぼしているのかを明確にし、幼児をもつ親のワーク・ライフ・バランスのあり方について具体的な支援策を考察する。また、子どもの健全な発達に資する社会的支援のあり方について、わが国よりも女性の就労率が高い米国に着目し、主にNPO活動等の資料や情報の収集を行い、女性活躍推進社会における支援のあり方を探ることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本家政学会、日本家族社会学会、日本家政学会家族関係学部会、日本保育学会への参加を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大によってすべてオンライン開催となり、想定していた旅費が未使用になったことによる。 当初はインターネット調査を計画していたが、静岡県内の地方都市をフィールドとした質問紙調査を行えることが決まり、外部機関に委託に関する費用が未使用となった。一方、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、静岡県内のフィールド調査が延期・中止になった事から、旅費の未使用額が増えたこともある。 さらに、勤務校において男女共同参画室による研究補佐員の雇用が認められたことによって、想定していた謝金が未使用になったこともある。 次年度は都市部のデータを収集することも検討しており、インターネットを用いた質問紙調査を外部機関に委託して行うことを計画しており、未使用となった助成金を調査及び分析に係わる費用、調査補助の謝金として用いるつもりである。
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