研究課題/領域番号 |
20K02324
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
冨永 美穂子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (50304382)
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研究分担者 |
石川 伸一 宮城大学, 食産業学群, 教授 (00327462)
湯浅 正洋 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (00756174)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コンソメスープ / 熟練者 / 非熟練者 / 料理人 / 協働 / 成分分析 / 数値化 / 官能評価 |
研究実績の概要 |
料理人と研究者が協働し,料理人が分子調理法を活用して調製した料理を研究者が分析評価し,従来調理法と比較しながら分子調理のおいしさを数値化,見える化すると共に分子調理を取り入れたおいしい科学教室を開催し,その有効性を明らかにしていくことを本研究課題の目的としている. 料理人との協働に重点をおき,協議の結果,料理人自身の興味・関心や料理人が後進を育成する視点を重要視していたことから,追究する料理をコンソメスープと決定した.2021年度は2020年度に行った熟練者2名,非熟練者2名に同じ材料・分量で調製してもらった渾身のコンソメスープ4種と比較対象として市販粉状ビーフコンソメスープ2種の呈味および香気成分を分析した結果に関して(一社)日本調理科学会2021年度大会において発表を行った.また,2020年度に実施した分子調理を含めた新しい料理に関するwebアンケート結果についても同上の学会において発表を行った. 2021年度は2020年度の結果をもとに,料理人,研究者で協議し,再度コンソメスープの調製を試みた.エコール辻 東京の教職員,学生のみなさんにご協力いただき,料理経験25年以上の西洋料理人2名,日本料理を専門とする料理人1名,学生1名にビデオカメラ付きヘッドセットを装着してもらい,調製においては,分量・切り方を揃えた材料および塩分使用量を規定して行い,調製途中の複数点でサンプル抽出を行った.西洋料理人群,調味料開発を行った経験がある群,学生群の3群で調製コンソメスープの官能評価を行った.調製コンソメスープの呈味および香気成分を2020年度に準じて,2022年度に分析予定である.コロナ禍継続のため,分子調理を取り入れたおいしい科学教室は開催できなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度と同様長期化する新型コロナ感染拡大防止による移動制限の中,学会および予定していた勉強会等もオンライン開催となり,本研究課題関係者全員の協議は2021年度もオンラインに限定された.加えて,コロナ禍における教育活動への対応に時間が費やされ,その結果,コンソメスープ調製実験を実施できたのが3月下旬となり,成分分析等が次年度に持ち越された.しかしながら,2020年度に重ねてきた協議やコンソメスープの調製実験,分析結果に対する意見交換会により,2021年度の実施内容に関する協議はオンライン上でスムーズに実施できた.また,ヤマキ(株)所属で分子調理研究会会員による研究協力も得られ,協働体制が拡大できた. 2021年度は2020年度の成果が3件,学会報告でき,オンライン開催であったが,聴講者が予想以上に多く,興味・関心の高さがうかがえた. 2021年度は熟練者として西洋料理人2名,非熟練者として日本料理の料理人および学生の4名でコンソメスープ調製実験を行った.熟練者2名は昨年度と同様,指定された材料分量で指定された最終収量のコンソメスープの調製が確認できるとともに日本料理の料理人,学生との差を見ることができた.ビデオカメラ付きヘッドセットを装着してもらい,調製実験を行い,料理人がどこに注目し,どのように見極めているのかについても比較検討できるよう,映像と言語での抽出を試みたので,研究・教育活動双方において価値ある成果が得られると考えている.しかしながら,最終収量が調製者によって異なり,使用食塩量は調製者全員同量を使用したため,成分分析や官能評価に影響することが予想される.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に実施したコンソメスープ調製実験サンプルの呈味成分(遊離アミノ酸,核酸,有機酸,味覚応答など)および香気成分を分析比較する.官能評価に関しては,コンソメスープの味がわかる西洋料理人群,調味料の開発経験がある食品企業勤務者群,若年層であり,一般の学生群の3群で実施を試み,熟練者および非熟練者調製スープの嗜好差とともに専門料理人および料理人以外のスープ自体の評価差も明らかにしたいと考えている.また,コンソメスープ調製者の調製中の視点やスープの見極め点についても比較分析を行う予定である.これら2021年度の調製実験結果について,料理関係者と情報共有し,2023年度以降の新規予算申請なども念頭におきながら今後の展開を協議する. 2020年度に実施したコンソメスープの調製実験結果については,学会発表のみに留まり,2021年度中に論文化できなかったため,2021年度の結果も必要に応じて含めながら学術雑誌への投稿を予定している. 長期化するコロナ感染拡大防止措置により,分子調理法を取り入れた実験研究やおいしい料理教室が予定通りに実施できない状態が継続している.2022年度は徐々に制限解除され,移動の自由度が高まり,料理教室等も開催できる可能性が高い.引き続き,東広島市教育委員会との連携事業「科学の芽育成講座」に登録すると共に広島県の郷土料理のひとつである「呉の肉じゃが」などを実験サンプルとして取り上げ,従来法と真空低温調理法を用いた新しい調理法で食感(破断応力,付着性など)や嗜好性(食感,味のしみこみの程度など)の違いを分析したいと考えている.また,分子調理法を含む多種多様なプリン画像の印象評価や嗜好性の評価も継続して行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大防止に伴う移動制限のため,学会がオンラインで開催され,旅費の支出が2021年度もほとんどなかった.加えて,実験研究内容も制限され,実験にかかる消耗品の支出や学生補助などの人件費支出が少なく,2020,2021年度の予算執行がコロナ禍により難しい研究分担者も存在したので,2022年度はそれを加味して,予算配分額において未使用額のある研究分担者の配分額を多少減額するなど当初の予定よりも若干変更し,使用計画を調整した.2022年度の研究代表者側の配分額を増額し,消耗品等をまとめて購入し,必要に応じて,研究協力者,研究分担者に配送手続きをとる予定である.
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備考 |
分子調理研究会 https://www.molcookingsoc.org/ 本研究課題遂行メンバーを中心に運営し,定期的に会誌の発行や勉強会を行っている.昨年度,本研究成果について,オンライン勉強会で報告した.
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