研究課題/領域番号 |
20K02326
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研究機関 | 長野県立大学 |
研究代表者 |
稲山 貴代 長野県立大学, 健康発達学部, 教授 (50203211)
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研究分担者 |
大河原 一憲 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30631270)
小島 道生 筑波大学, 人間系, 准教授 (50362827)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダウン症候群 / 健康づくり / 身体活動 / パートナーシップ / 青年期 |
研究実績の概要 |
2020年度は、青年期・成人期のダウン症者を対象に肥満の実態と関連する栄養・食生活、身体活動、社会心理要因、環境要因を明らかにするための横断調査(介入の事前評価を兼ねる)の実施を予定していた。しかし、ダウン症者は心疾患をはじめ様々な疾患を有し、COVID 19感染後の重症化リスクが高い。そのため、本年度は、COVID 19感染症予防・拡大予防を優先し、ダウン症者とその家族との接触の機会を避け、当事者を対象とした調査等の実施を1年延期とした。 本年度の実績として、まずは、研究の実施に至る手順や実施方法など、研究者間とのコミュニケーションをすすめた。対象者や協力家族、団体等との直接的な接触を避けつつ、調査研究を実施するためのオンラインツールの活用を始めとした方法や手順の変更を検討した。あわせて、関係団体等とのパートナーシップの形成をはかった。オンラインを活用して、日本ダウン症協会の支部と、2021年度に向けての具体的な調査手順や方法の検討、当事者団体からみた青年期・成人期の健康課題や関連要因等についてのフリーディスカッションをすすめた。 また、これまでのダウン症児者を対象とした研究成果の発信に努めた。ダウン症候群のある児童を対象とした肥満と身体活動との関連の発表に加え(Heliyon, 6, 2020)、新たに、学童期と思春期の児童・生徒のデータ解析から、思春期では、学期中の身体活動を維持するための学校外、特に長期休暇中の過ごし方への介入がより重要であるという知見を得た(日本健康支援学会、印刷中、2021)。この成果は、思春期に続く青年期のダウン症者を対象とした身体活動促進による健康づくりプログラム開発への知見となるだけでなく、本研究に対する関係団体等からの理解と信頼を得ることに大いに貢献している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れている理由は2つ。いずれもCOVID 19感染の影響によるものである。 一つ目の理由は、COVID 19感染症予防・拡大予防を優先し、ダウン症者とその家族との接触の機会を避け、調査等を延期せざるを得なかった。ダウン症者は心疾患をはじめ様々な疾患を有し、COVID 19感染の重症化リスクが高い。すでに研究協力体制をとることができていた公益財団法人日本ダウン症協会とその支部会、調査協力を求める予定であった親の会等も、活動自粛を余儀なくされた。研究班メンバーの地域間移動の自粛要請もあった。オンラインによるコミュニケーションを円滑にすすめるには、研究者側と当事者側、双方の準備期間も必要である。身体活動の調査に不向きな時期(夏季や冬季)もあることから、実施予定を1年先に延ばさざるを得なかったことが、研究実施状況の大幅な遅れのさいだい要因である。 二つ目の理由は、研究者の学術研究活動にさくことができる時間が極めて限られてしまったことである。大学での本務がオンライン化されることにより、大学教員のオンライン授業準備等の教育活動や事務活動等の負荷が増大した。そのため、本年度の研究に関する活動の開始が、後期以降と、大幅に遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
COVID 19感染症予防・拡大予防を優先する中で、どのようにダウン症者や家族、当事者団体等とコミュニケーションをとりながら調査研究をすすめていくのか、具体的な対応が、今後の研究推進のうえでの課題である。 障害のある者を対象とした場合、協力依頼や研究参加の同意の確認等、倫理的配慮がより求められる。これまでは、研究説明会の開催、親の会の集まりや当事者が所属する組織(例、ダウン症協会や特別支援校)等への訪問など、さまざまな機会を活用して直接対面し、口頭と文書で丁寧に質問に答えながら説明を行い協力を求めるという手順を踏み、その後に当事者とその家族に研究説明を行い同意を得てきた。この直接対面での協力依頼と研究説明の実施が困難である。また、地域によってリスクに対する心理的なハードルも異なることへの対応も考えなければならない。 実現可能な調査方法への変更も必要である。例えば、身体計測では、当初、研究者がコミュニティに用意した会場に出向き、同じ測定機器を使用して測定する予定であったが、研究者の移動自粛が求められる中では、当事者や所属団体に測定を委ねざるを得ず、そのための使用機器の変更や事前の詳細な打合せが求められる。また、身体活動の測定も同様に、オンラインを活用した測定方法の説明や実施状況の把握の方法を検討する必要がある。 これらの課題を解決するために、まずは、オンラインでの円滑なコミュニケーションが可能である団体と話し合いを重ねながら、調査研究を実施する。そのプロセスを見える化し、それをモデルとして次のコミュニティでの実施にすすむこととする(モデリング)。そのさい、協力団体は縁故方式で、ネットワークを広げていくこととする。 既に、この方法で、公益財団法人日本ダウン症協会の支部と2021年度の実施に向けての協働作業をすすめている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19感染症予防のため、青年期・成人期のダウン症者とその周囲の人たちとの接触を避けるため、調査を延期したため。 また、当事者等との協働によるHPなどの作成検討も延期することになった。これら延期分は、2021年度に実施する予定である。 関連学会の開催が中止あるいはオンライン開催、また研究者の移動制限により旅費の使用が予定より大幅に少なかったため。
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