本年度は海苔成分のインスリン様作用を確認するために動物細胞を用いて検討した。マウス前駆脂肪細胞(3T3-L1細胞)を使用し、海苔成分が糖の取り込みに与える影響について脂肪細胞での脂肪蓄積量を指標に検討した。3T3-L1細胞を脂肪細胞に分化させた後に比較試験を行った結果、海苔インスリン様作用成分の濃度により異なる結果は出たものの、インスリン無添加培地条件に比較して海苔成分を添加した群で脂肪の蓄積が有意に高くなっていた。加えて、インスリン添加群と有意差なく脂肪を蓄積していた海苔成分濃度もあったことから、3T3-L1細胞において海苔成分は糖の取り込みを促進することで、蓄積脂肪を増加させていた可能性が示された。今後はインスリンと同じような作用機序で糖の取り込みに作用しているか詳細に検討していくことを予定している。次に、板海苔からインスリン様作用成分を簡易的に抽出するためのエタノール濃度の確認を行った。その結果、昨年度の結果より低い濃度でも効率よく成分抽出可能であることが確認できたことに加えて、抽出容量を増やした条件でも同程度抽出できることも明らかにした。海苔は一般的に板海苔に加工されて流通するが、抽出試料の加工コスト削減を考慮し、板海苔より加工過程が少ない方法で加工された海苔で成分抽出を検討した。その結果、板海苔と同様に成分抽出が可能であることを確認できた。この結果から、今後はこれまで活用されてこなかった時期に採取された海苔の有効利用に役立てたいと考えている。
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