研究課題/領域番号 |
20K02330
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
渡部 智希 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (60254702)
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研究分担者 |
小島 洋一郎 北海道科学大学, 工学部, 教授 (50300504)
一戸 善弘 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (40712089)
伊藤 佳卓 北海道科学大学, 工学部, 講師 (90849142)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Talbot像 / モアレ縞 / 屈折力測定 / センサシステム |
研究実績の概要 |
本研究では、Talbot像とモアレ縞による屈折力測定を基盤として、液状食材などの品質を簡易に評価するセンサシステムの構築を目標の一つとしている。 今回、試料を入れるアクリル製セル(容器)に代わって、歪みの少ないガラス製容器を作成した。片面をガラス板、もう片面を焦点距離1m レンズの曲面側を内側にしたものをスペーサーで固定して試料セルとした。その結果、歪みのない安定した傾角を示し、モアレ縞のコントラストも増大した。この容器は凸レンズが内側にきているため液体を入れる部分は凹レンズのようになっていて凹凸の合成レンズのような形となっている。 試料はエタノール溶液、グリセリン水溶液、砂糖水溶液を使用した。エタノール溶液では濃度を0~100%まで変化させた時のモアレ縞傾角を測定した。エタノールの粘性率は40%で最大となるがモアレ縞傾角の最小角度は80%濃度の時に最も小さくなり、粘性率が傾角に与えると考えていたが、関連性が少ないと考えられた。次に砂糖水溶液では濃度が高くなると、モアレ縞傾角は小さくなった。砂糖水溶液は濃度が高くなると屈折率も高くなるため、屈折率とモアレ縞傾角には関連性があると考えられた。最後にエタノール、グリセリン、砂糖の3つの水溶液のモアレ縞傾角とそれぞれの濃度における屈折率との関係を検討した。その結果、被検液の屈折率が大きくなるとモアレ縞傾角は小さくなり、被検液の屈折率がモアレ縞傾角に影響することが考えられた。 これらの結果よりモアレ縞傾角による液体の屈折率測定が可能であり、複数回使用した油脂の酸化や水の混入等による劣化や屈折率が変化する液状食材に適用できると考えられる。今後、油脂の劣化の判定等をこのシステムで行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、セル(容器)作製において、同材質・同試料であっても若干のモアレ縞傾角の違いがあるため、均一性の良いセル作製が必要となっていた。今回、歪みの少ないガラス製容器の作成により、安定的に測定データを取得できるようになった。更に一方の片面にガラス製凸レンズ、もう片側にガラス板を使ったセルを作成した。これにより歪がなく、コントラストの優れたモアレ縞が生成された。
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今後の研究の推進方策 |
測定に使用するセル(容器)の均一性を向上させるため、ガラス製のセルへ変更した。さらにばらつきを軽減したセルの作成を試みる予定である。今回、レンズとガラスを接合するスぺーサには簡易型として3Dプリンターフィラメントで作成したがアルミ製なども検討中である。また、今回、砂糖などの食品に多用される試料を測定したが、様々な品種の差異をモアレ縞傾角より見積もりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍もあり当初計画していた実験項目への対応に予想以上の時間を要するに至った。次年度は、この状況を鑑みて研究の方策を見直し、実験を行う予定である。
本研究は、光学的手法であるTalbot像とモアレ縞による屈折力測定を基盤にして、油や水溶性の食材をターゲットに品質を簡易に評価するセンサシステムの構築を進めてきた。現時点で完成しているシステムの精度評価には、既存の様々な物理的・化学的な分析機器との整合性を図る必要がある。このため、2024年度は、予算との調整を図り、分光器(紫外光・可視光・赤外光領域など)や電気計測器(導電率・pH計など)、熱分析機器、材料試験機(表面組成など)を購入し、得られたデータとの相関関係を多変量解析により分析する。また、この処理には高性能なPCが必要になることも想定している。
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