最終年度である2022年度は,本研究が定義する高齢期の住居管理のうちの3番目、生活財の管理の実態や課題について,日本家政学会,日本建築学会においてそれぞれ研究発表した.その内容は以下の通り. モノの保有や収納に関して不都合を抱える世帯は,年齢,世帯状況によらず6割を超え,死蔵品や散らかり,地震での転倒の危険の問題を指摘している.建築年数の古い住宅に高齢者のみで暮らす世帯における生活財の整序の問題や,次世代への負担の継承の問題は深刻である.一方でさらなる高齢化に向けて,衣類やアルバム・写真,本など,家の中に滞積しているモノの整理,片付けの必要を認識する者は多い.ただし整理,処分の進捗状況については,「すでにやっている」「これからやる」「やりたいができそうにない」に三分される. 居住の管理,住宅維持管理,生活財管理は互いに連動していることが確認された.さらなる高齢化に向かって,終の棲家とする住宅の建て替えやリフォームを行う場合,それがモノの見直し,すなわち生活財管理の格好の契機と成り得る.高齢期直前のステージで高齢期以降の住まいの選択を行い,前期高齢期中に住み替えや現住宅の整備を行うことが望ましい.それにより必然的に住宅内のモノの整序も行われることが理想的といえる. 現時点で居住の判断や住宅維持管理を放棄したまま,多くのモノを抱え込んで身動きがとれない,高齢夫婦のみ世帯や高齢単身者については,地域のバザーや整理,片付け支援のしくみなど,外部からの助力によって支えられる必要がある.同時に離れて住む子世帯による高齢期の住居管理の代替は不可欠であろう.子世帯の助力が期待できない場合,高齢期の住居管理の相談に応じるようなケアマネならぬ,居住のマネージャーの役割を担う地域のしくみが求められる. 以上の本研究結果を2報にまとめ,2022年度に日本家政学会誌に投稿,審査のうえ掲載された.
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