研究課題/領域番号 |
20K02336
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
東 実千代 畿央大学, 健康科学部, 教授 (10314527)
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研究分担者 |
大友 絵利香 畿央大学, 健康科学部, 講師 (20524961)
久保 博子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (90186437)
佐々 尚美 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (50379525)
小濱 朋子 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (50736014)
磯田 則生 奈良女子大学, その他部局等, 名誉教授 (60016871)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者 / フレイル / 熱中症 / 温熱環境 / 介入 / 視覚 / 行動変容 / 生活習慣 |
研究実績の概要 |
2021年度は自立した生活を送っている奈良県都市部在住の高齢者24名(継続)、農村部在住高齢者20名(新規)を被験者としてフレイル度調査を行うとともに、夏期において室内温熱環境の実測、住まい方調査、日中の活動量測定を実施した。熱中症予防行動の促進に用いる介入ツール(室内温熱環境可視化ツール)については、2020年度の課題分析結果に基づいてデザインを再検討した。概要は以下の通りである。 【フレイル度調査】近い将来介護が必要となる危険の高い高齢者を抽出する目的で開発された基本チェックリストによる調査を実施した。被験者の年齢は平均80歳±6歳であり、総合得点を3段階(健康・プレフレイル・フレイル)に分類して判定したところ、健康が約3割、プレフレイルが約5割、フレイルが約2割であった。判定には日中の活動レベルとの相関が認められたが、年齢やBMIとの関連性はなかった。活動レベルは男性が女性がより高く、都市部が農村部より高い傾向がみられた。一方、主観的健康感は農村部が都市部より高いことから、性差や地域差を考慮した評価・解釈が必要であると考えられた。 【室内温熱環境実測・住まい方調査】2001年8月上旬から中旬を主な測定期間としたため、雨天日が多く猛暑日の温熱データが十分に取得できなかった。農村部においてはエアコンの使用率が低く、室温を確認する習慣のある人が少ない傾向があり、夜間に室温が高い事例が散見されるなど、熱中症予防の意識や予防行動の実践状況には改善の余地があると考えられた。 【室内温熱環境可視化ツール】人工気候室における高齢者の温熱生理反応のデータをもとに、熱中症予防行動を促すべき温度帯を検討し、その範囲で変色するインキを用いた室内温熱環境可視化ツールを作成した。精度検証実験を行った結果、指定とした温度で精度よく変色し、色変化は高齢者の視覚特性に対応したものであることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
奈良県都市部在住および農村部在住の高齢被験者のリクルートの結果、調査への協力が得られ、2021年度にベースラインとしての実態調査を行うことができた。継続して研究協力が得られる見込みで、昨年度の調査実績から、概ね精度のよいデータが取得できることが確認できた。 熱中症予防行動の促進に向けた介入ツールについては、温熱環境を視覚的に認知できるデザインを目指し、感温印刷の技術を応用して高齢者の生理心理特性を加味した温度変色範囲において精度よく変色するツールが制作できた。介入ツールの変色状況を人工気候室内で検証した結果、精度および高齢者の視覚特性上の問題がないことが確認され、2022年度には介入調査が実施できる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
室内温熱環境の可視化ツールを被験者に配布し、2021年度のベースライン調査結果と比較するための調査を行うとともに、日常生活におけるツールの活用方法や、確認頻度、危機感の有無、気づきの後の行動などを調査し、介入の効果を行動変容という観点から検証する。 コロナ禍であることから、今後の社会状況により調査員による被験者との対面が困難な場合には、郵送や看護師の個別訪問という調査方法で実施する予定である。2021年度の実績より、このような方法であっても概ね良好なデータが取得できる見込みである。 2021年度は環境実測期間の天候が不順で、猛暑日の室内温熱環境データが十分に取得できなかった。2022年度の気象状況によっては研究期間の延長を検討する可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
介入ツールの納品が年度末になることから、一部の研究機関において納品と支払いを次年度に持ち越したためである。 納品確認後に速やかに会計処理を行う予定である。
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