研究課題/領域番号 |
20K02338
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
臼井 将勝 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 准教授 (50399656)
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研究分担者 |
足立 収生 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (20027189)
河邉 真也 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (60579415)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヒスタミン / アミン酸化酵素 / アルデヒド酸化酵素複合体 |
研究実績の概要 |
ヒスタミンをImidazole 4-acetaldehydeへと変換するアミン酸化酵素FAO、およびImidazole 4-acetaldehydeをImidazole-4-acetic Acidへと変換するアルデヒド酸化酵素複合体ALOXを一般的な研究設備にて容易に製造できる体制構築に取り組んだ。FAOは、プレ培養した麹カビAspergillus luchuensis AKU 3302 株をブチルアミン添加培地に移して同菌糸体上にFAOを誘導した。菌糸体を超音波処理して得た破砕上清にFAOを含む画分を得ることができた。ALOXは、酢酸菌Gluconobacter thailandicus NBRC 3258 株の超音波破砕液に40%飽和硫安を加えて塩析し、脱塩後にALOX活性を含む画分を得ることができた。両酵素とも超音波処理と一般的な遠心分離によって租精製が可能となり、従来の超遠心分離依存が解消できた。両酵素の収量は、麹カビ培養液300 mLから0.025 unit/mL相当の活性を示すFAO画分が、酢酸菌培養液300 mLから0.3 unit/mL相当の活性を示すALOXが、それぞれ11 mL得られた。両酵素とに実用化に向けた収率向上が課題として残ったが、生産体制の大規模化に向けた基礎的技術が確立できた。 高塩濃度条件下でのFAO/ALOX共役反応系によるヒスタミンの消去活性について検討した結果、5% NaCl存在下ではNaCl非存在下と比較してヒスタミン消去活性に変化は見られなかった。他方、10% NaCl存在下では活性が半減し、15%以上では1/3以下に低下した。また、低温条件下でのFAO/ALOX共役反応系によるヒスタミン消去についても検討し、10℃または4℃でもヒスタミンをImidazole-4-acetic Acidへと変換することが可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大による研究環境の混乱により、計画していた内容を一部変更し、実施可能なものから研究を開始した。作業時間と作業人員を削減するために、インキュベーション時間の長い項目を優先して行った。その結果、本年度は酵素の簡易製造法に重点を置き、次いでFAO/ALOX共役反応系の最適化や食品応用を想定した温度や食塩濃度への使用可能範囲に関する検討を行った。何れも一定の知見を得る事はできたが再現性の確認等が不十分であることや、酵素の収率など想定した成果に至らなかった項目が散見されるため、研究の進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は引き続き両酵素の製造方法の効率化に取り組み、併せて共役反応の証明と最適化に尽力する。また、低温、高塩濃度、pHなど食品加工において重要な要素と酵素活性との関係についてより明確にすることを目標とする。さらに、出汁や干物等の具体的な加工食品においてFAO/ALOX共役反応系の有効性を示すことを目指す。令和2年度に生じた進捗の遅れについては、予定していた検討内容の削減はせず、共同研究者間で連携、共助の体制を強め可能な限り本年度中に解決できるように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大による研究体制の混乱により、進捗に遅れが生じたため一部消耗品費の使用が滞ったため残額が生じた。令和2年度に生じた進捗の遅れについては、予定していた検討内容の削減はせず、共同研究者間で連携、共助の体制を強め可能な限り本年度中に解決できるように努める。このために生じた残額を次年度に使用する必要がある。
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