本研究では2つの技術的観点から研究テーマに取り組んでいる。1つ目は,(1)高い心電図信号の検出力を有し,身体への圧迫を抑制することで不快感を軽減できる衣服型心電図センサの開発である.2つ目は(2)既存の被服構成方法によらない電極構造を提案することである. 上記(1)について,R2年度に人体表面から心電図信号を効果的に取得できる電極配置を探索において有効なエビデンスとして,体表面電位図を取得することを考え,そのためのプロトコルの検討・構築を行った.R3年度は,構築したプロトコルに基づき,20代男性5名を用いて体表面電位図の計測を実施した.またこの結果に基づいて,電極の陽極または陰極の候補位置を同定した.R4年度は,電極を最適配置した胴部着用装具を試作し,様々な動作における心拍検出率の測定を行い,その性能を評価した。 上記(2)について,R2年度に光造形方式の3Dプリンタを導入し,人体動作によって発生する衣服の引張伸長に起因して電極が垂直方向,すなわち皮膚面方向に拡張する機構をもつAuxetic構造体を作製した.また,作製したAuxetic構造体を組み込んだ電極構造モデルを作製し,人体動作を過程した衣服伸長が生じた場合の条件下で,模擬皮膚に対して作用する力の大きさを把握するために,衣服圧計測を実施した.R3年度は,R2年度試作した電極構造を心電図モニタリングウェアに実装することを目標として,Auxetic構造体を薄型成形し,動的応答性を向上させる仕様を再考した.さらに,改良Auxetic構造体をベルト型装具に組み込み,腕部に装着できる装具を試作できた.R4年度は,R3年度に試作した装具を胸部用に改良し,それを着用した時のS(心電図成分)/N(動作によって混入するノイズ成分の割合を指標を用いてその性能を評価した.
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