2020年度は、試料として養殖ブリを用い、魚肉を初期腐敗の状態になるまでの期間冷蔵し、普通肉(背肉)および血合肉について、揮発性成分、脂質酸化指標(TBARS)、腐敗指標(TVB-NおよびTMA)、生菌数および細菌叢の変化を明らかにするとともに、いくつかの揮発性成分が魚肉腐敗時の品質指標の候補として挙げることができた。 2021年度は、異なる貯蔵条件(冷蔵、氷蔵およびスーパーチルド)で初期腐敗に至るまで貯蔵したブリ肉各部位(普通肉および血合肉)の細菌叢の変化を明らかにするとともに、揮発性成分、生菌数、脂質酸化指標および腐敗指標について検討した。スーパーチルド貯蔵は、ブリ肉の品質保持に有効であったが、その効果は、分析項目により異なった。いずれの貯蔵温度も貯蔵日数の増加に伴い、属レベルではPseudomonas属が優勢になった。 2022年度は、品質劣化への脱酸素包装およびスーパーチルド貯蔵の抑制効果を明らかにすることを目的として、異なる包装および温度条件で腐敗に至るまで貯蔵したブリ肉の生菌数、腐敗指標、脂質酸化指標、揮発性成分および細菌叢の変化について検討した。脱酸素包装により、腐敗の遅延、変色防止および脂質酸化の抑制効果があり、さらにスーパーチルドとの併用においてよりその効果が増強されることが示唆された。しかし、腐敗指標については、脱酸素包装による増加遅延効果は認められなかった。 一方、この貯蔵期間において、含気包装では優勢菌が認められるのに対して、脱酸素包装では特定の微生物が増殖せず、菌叢の組成だけが変化した。 最終年度は、抗生物質を加えたブリ肉を氷蔵し、酸化指標および揮発性成分の変化を分析し、これらの変化に対する細菌増殖の影響を明らかにした。
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