研究課題/領域番号 |
20K02349
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
武川 直樹 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (20366397)
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研究分担者 |
斎藤 博人 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (00328519)
大島 直樹 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 講師 (30732820)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 共食 / コミュニケーション支援 / 高齢者家族 / 支援システム / QoL |
研究実績の概要 |
離れて住む高齢者の親世帯とその子供世帯間が,互いの忙閑の様子をセンサ情報から共有し,得られた情報から会話開始のタイミングを調整し,共食に接続されるサービスの実現を目指して取り組んだ.. ■プロトタイプの構築:調理行動推定センサの開発とエージェントによる行動伝達技術を整備し,プロトタイプ(IRORI:Interface for Remote family member using Online Responsive Intermediator)を構築した.IRORIは,キッチンやリビングなどに配置したセンサから得られるデータに基づき,家族の遠隔共食に対する状況的・心理的な準備状況をタブレット上のエージェントを介して相互に知らせて,会話や共食を導くことを狙いとする.システムを離れて暮らす高齢の父とその娘宅に導入し,予備的な利用試験を実施した.実験を通じて親子の遠隔共食を実現するためのシステムの必要要件を抽出した. ■遠隔共食の同時刻開始を支援するシステム開発と検証:上記システムのタブレット上のテキストコミュニケーション部をスマートスピーカに置き換え,共食開始をスマートスピーカエージェントが支援するシステムを提案,構築した.また,ユーザ行動推定の基礎調査として,単身の高齢女性宅に人感・照度・開閉センサとカメラを設置し,調理・食事行動のデータを収集し観察を行った.「キッチン」の滞在情報,「冷蔵庫」「食器棚」「流し台」「電子レンジ」の使用状況から調理の進捗の推定が可能であることが示唆されるとともに,次年度の,複数のセンサ情報の組み合わせにより精度の高い行動推定の自動化に資する基礎データを取得した.本システムを用い,センサ情報からのユーザ行動推定を実験者自身が行うWizard of OZ実験を実施し,ユーザインタビューを実施した結果,ユーザがシステムを受容していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の武川は,既開発のセンサを家族のキッチン,ダイニング,リビングに設置し,映像に収録した被験者の行動状況と比較分析して,行動推定可能性を検証する予備実験を実施した.また,各種調理の様子を映像収録し,調理開始に至るプロトコル,調理動作としてセンシングすべき情報の検討を実施した.調理イベントを検知することによる共食開始に至るユーザ行動の検討を行い,観測した行動に基いて会話/共食に至る遷移モデルの仮説を構築した. 以上の取組は当初計画の通りであり,研究は概ね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた課題や知見をシステム改良に反映させ,再度1組の遠隔家族間共食の予備実験を実施する.この予備実験ではシステムの精度確認に加え,ユーザが会話/共食に至る遷移モデルの仮説を検証する.具体的にはシステム利用前後で,家族間の会話頻度・共食頻度の変化の増減を定量的に比較し,家族の価値観・連帯感の変化,生活の充実度の変容等,質問紙を用いて測定する.さらに,半構造化インタビュー調査, Big-FiveやKiSS-18等の指標で家族のパーソナリティや社会スキルに関する特徴を把握することを試みる.親子間のコミュニケーション行動の変容まで調査するため,実験期間は約2ヵ月を設ける.以上の予備実験から必要なシステムの改善を実行,心理評価に向けた測定方法の有効性を検証する.そこで得られた課題を再度,システムに反映させる.次に,実験デザインを見直したうえで,複数組の親子にIRORIシステムを設置して,親子のニーズに対応した効果を確認する実証実験を行う.以上の実験結果を分析し,ユーザの会話・共食に至る行動の遷移モデルを修正,詳細化する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大防止により,研究分担者との研究議論をリモートで実施し,また学会がオンライン開催となったため,旅費の執行がなされなかった.次年度も同様の状況が予想されるため,旅費の一部を実験の検証回数の増大や分析精度の向上に必要な経費に充当する.
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