研究課題/領域番号 |
20K02352
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
長嶺 憲太郎 広島国際大学, 健康科学部, 教授 (80412352)
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研究分担者 |
北川 雅恵 広島大学, 病院(歯), 助教 (10403627) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | LAMP法 / NASH / ミュータンス菌 / ジンジバリス菌 / 口腔内細菌 / う蝕 / 歯周病 / 遺伝子検査 |
研究実績の概要 |
本研究では、唾液中に含まれているミュータンス菌の中でもcnm+/pa+ S.mutansを短時間に且つ簡便に検出する方法を確立し、cnm+/pa+ S.mutansの保有頻度と対象者背景との関連性を明らかにすることを目的としている。今回、等温で遺伝子を増幅できるLAMP法を用いた検出法の確立に関する研究を行った。 現在までに、cnm遺伝子を検出するLAMP用プライマーの設計を終了しており、精製したDNAレベルで特異的に検出できることを確認している。今回、更に詳細な検討を行った結果、本技術がcnm遺伝子を十分検出できるレベルであることを確認し、その結果を報告した(Kitagawa et.al. Analytical Biochemistry Volume 605, 113812, 2020)。すなわち、口腔内細菌のうちジンジバリス菌、ソブリヌス菌、カンジダ菌のDNAを鋳型としてLAMP反応を行っても、これらの細菌は検出できなかった。これは、他の細菌と区別して特異的に検出できていることをあらわしている。また、従来であれば細菌からDNAを抽出して遺伝子増幅法の鋳型として用いていたが、本技術を用いれば、細菌からDNAの抽出をしなくても検出できることを見出し、より簡便に検出操作が行える事を示した。 更に、唾液からの菌の増幅・検出方法についても検討した。すなわち、マイクロチューブ中に、タブレット型に成形した固形培地と口腔内からサンプリングした唾液を混合し、37℃の恒温槽中に静置した。培養1~2日後、唾液を直接LAMP反応液に添加し、口腔内細菌の有無をLAMPにより増幅した。この結果、本法を用いてもcnm遺伝子を十分検出できるレベルであることが確認できた。これは、使用するチューブが1本で済み、抽出操作の時間短縮にもつながるため、汎用的に利用されることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、pa遺伝子に対する特異的なプライマーの作製であった。まず、pa遺伝子に対する特異的なプライマーの作製は、プライマー作製ソフトPrimerExplorer Ver.5を用いて特異的とみられる塩基配列をピックアップし、5種類のプライマーを合成した。作製したプライマーの周辺の配列を含む塩基配列をプラスミドにクローニングし、プライマーの感度を調べるための鋳型を作製した。この鋳型を用いて、LAMP反応の反応液の最適化を行った。すなわち、ベタイン濃度およびポリエチレングリコール (PEG) 濃度の違いによる反応性の違いを確認した。この結果、ベタインを添加するよりもPEGを添加した方が感度良く検出できることを見出した。 今年度、大学生91名を対象として唾液を採取し(昨年度は102名)、LAMP法を用いたcnm遺伝子陽性ミュータンス菌の多検体検出法で保菌者を確認した。この結果、91名中26名(28.6%)においてcnm遺伝子を持つミュータンス菌であることが判明した。これまでのサンプルを合計すると、201名中53名(26.3%)がcnm遺伝子陽性ミュータンス菌の保菌者であった。これは、現在報告されている保菌者数の割合と合致することから、本検出系も検査に利用できることが示唆される。 当初の計画にはなかったが、ミュータンス菌からDNAを短時間に且つ簡便に抽出する方法を確立することができ、特許出願した(特願2021-082384)。今後、多くのサンプルを処理しなければならないが、本技術により時間の短縮になることが期待できる。 一方で、今年度はコロナの影響もあり、新たな唾液を用いた検討に関して実験が停止している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
pa遺伝子に対する高感度な特異的プライマーの作製を目指す。pa遺伝子の塩基配列から5種類のプライマーを選定し、LAMP反応液にPEGを添加することにより高感度検出が可能であることが分かった。次に、特異性について検討しなければならない。すなわち、PA遺伝子陽性のミュータンス菌には反応するが、その他の口腔内細菌のは反応しないプライマーの選定が必要となる。更に、反応時間の短縮も必要である。現在の反応液をさらに改良し、時間短縮に努めたい。 また、コロナの影響で唾液のサンプリングができない状況であったが、感染者集が減少してきたタイミングでサンプリングを行い、検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、コロナの影響により、消耗品(プラスチック製品)の納品が遅れたため、および、生体試料(唾液)のサンプリングに遅れが生じたためである。 今後の使用計画については、納品が遅れた場合でも年度内に受け取れるように、年度初めに消耗品の一括購入をする。蔓延防止等重点措置が解除になった段階で生体試料のサンプリングを行い、生体試料を用いた実験を行う予定である。
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