研究課題/領域番号 |
20K02359
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
河合 高生 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 課長 (30250319)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | セレウス菌 / 嘔吐毒 / セレウリド / 食中毒 |
研究実績の概要 |
喫食後短時間に一過性の嘔吐を発症するセレウス菌嘔吐型食中毒では、まれに肝障害や脳症等の重篤な症状を呈し、死亡例が発生することもある。本研究では、セレウス菌食中毒による重篤患者発生リスクの低減を図るため、細菌学的および遺伝学的手法を用い、調理食品中でのセレウス菌嘔吐毒(セレウリド)の産生性を向上させる様々な要因を調べ、重篤患者が発生しうる危険度の高い食品や条件を解明すること、並びに、迅速診断用に患者材料からのセレウリド検出法を開発することを目的としている。 これまでの結果より、菌株によってセレウリドの産生性に違いがあることを明らかにした。そこで、セレウリドの産生性を指標にして菌株を低産生株、中産生株、高産生株の3つに分類し、それぞれ2株ずつを米飯、焼飯に添加して1日後、2日後のセレウス菌数、セレウリド量等を測定した。いずれの株も白米よりも焼飯の方が産生量が高くなり、焼飯の産生量は高産生株が最も高く1gあたり10μg以上を超えたが、低産生株は高産生株や中産生株よりもかなり低く1gあたり1μg未満であった。焼飯で産生量が高くなった要因を調べるために、焼飯の調理に使用した具材や調味料を添加しない食品を作製し、高産生株や中産生株を添加してセレウリドの産生量に影響する要因を調べたが、顕著に影響を及ぼす要因を明らかにすることができなかった。このため、焼飯の調理条件を再検討して次年度に再実験を行う予定とした。 セレウリドの産生性で6段階のクラスに分け、各2株以選定した計18株について、次世代シーケンサ(Miseq)を使用してゲノム解析を行った。現在、得られた配列の解読を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
食品へのセレウス菌接種試験を実施し、菌株間でセレウリドの産生量に違いがあること、米飯と焼飯でもセレウリド産生量に違いがあることは確認されたが、その産生性に影響する要因を特定にするには至らなかった。18菌株についてゲノム解析を行ったが、配列の解読が終了できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
焼飯の調理条件を再検討して再度、調理方法を様々に変更した食品へのセレウス菌接種実験を行い、焼飯でセレウリド量が多く産生される要因を特定する。菌株のゲノム配列を解読し、セレウリド合成酵素遺伝子群の塩基配列を比較して配列の相違がセレウリドの産生量に影響したかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
食品への接種実験等の主要な実験が十分に実施できなかっために繰り越されている。次年度は、実施できていない研究活動のための物品費およびその他、旅費に使用する予定である。
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