研究課題/領域番号 |
20K02361
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
難波 知子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (80623610)
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研究期間 (年度) |
2020-02-01 – 2024-03-31
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キーワード | 体操服 / 来歴 / デザイン / 女子体育 / 洋裁技術 |
研究実績の概要 |
本年度は、お茶の水女子大学が所蔵する大正期のセーラー・ブルーマー体操服について、実物資料の来歴および被服構成(デザイン)の特徴を論文にまとめ、発表した。 体操服の実物資料については、これまで所蔵の経緯が記録されてこなかったことから、先行研究の未発表のアンケート調査などを聞き取り、記録を残しながら、本資料の寄贈が1979年に輿水はる海・外山友子・萩原美代子らによる調査の過程で実現したことを明らかにした。本資料は1999年以降、お茶の水女子大学の同窓会館に設置された歴史資料室で展示されたが、資料保護の観点から2016年以降は生活科学部生活文化学講座の資料室にて保管されることになった。保管・展示および後続の研究のための基本情報を整理することができた。 また実物資料の材料および形態的特徴について、被服構成学の見地から検証を行った。その結果、表布の織組織は、正斜文で2/1の3枚斜文、暑さ0.71mm、糸密度はタテ24×ヨコ19(本/cm)であることがわかった。外観からタテ糸に色糸、ヨコ糸に晒糸(太さは不均一であり、手紡ぎ糸の可能性が大きい)が用いられ、手触りから綿織物と推定された。デザインの特徴は、着用時は一見ワンピースに見えるよう上衣と下衣がウエストベルトのボタン留めで連結した構造にあり、特に上衣のパターンを詳細に確認した結果、前中心からネックラインにかけてタテ糸を通し、肩線にヨコ糸を通している特徴が見いだされた。これらのパターン形状は現代と大きく異なり、大正期の洋裁技術の特徴を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全国の女子師範学校におけるセーラー・ブルーマー型体操服の普及について調査を開始したが、数校の状況しか明らかにすることができなかった。資料が偏在する可能性もあるが、地域をいくつか絞り込んで調査を行う必要がある。 また体操服の構成(パターン)の調査は進んだが、復元品を製作するにあたり、材料の歴史的な検討が必要なことが判明した。当時の織物の種類や特徴、糸や染料の調査を進めながら、復元品に用いる材料を選定する必要がある。材料のどのポイント(綿織物であること、色、厚さなど)を優先するかを考慮しつつ、現在入手できるものの中でより当時の材料に近いものを選定し、復元品の製作に取りかかりたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、セーラー・ブルーマー型体操服の復元品の製作および復元品を着用しての動作確認に取り組む予定である。 復元品の製作については、使用する材料(布地およびボタン・ホック・テープ・ひもなどの付属品)の選定のため、実物資料に使用された布地と付属品の検証を行ったうえ、現在入手できるものの中で最も適する材料を用いて製作を行う。その際、縫製の歴史的な検証も行いながら、大正期における洋裁技術の特徴を把握する。 復元品を着用しての動作確認については、まずは実物資料を着用した卒業生の身長や体型を考察し、それらの条件に近い着用者を選定する。次に当時のスウェーデン体操の運動姿勢や動作を確認し、復元品の体操服を着用して、体操服の機能性について検証を行う。特に上下が連結した構造がどのように手足や胴の動きに影響を与えるのか、またネックラインのタックおよびウエストのギャザーがどのように上半身の体型を覆い、肩まわりの動きに対応するのかに着目して、各種の動作確認を進めていきたい。 体操服の復元工程と動作確認についての検証結果は、学会発表および論文投稿をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
体操服の復元材料を購入する予定であったが、当時使用された材料に近づけるため、実物資料に使用された材料の歴史的な検証が必要であることが判明し、復元材料の購入を次年度に見送ることとした。当該年度では、材料の歴史的な検証を進めた後、現在入手できるものの中でより当時の状況に近いと判断される材料を入手し、復元品製作を進める予定である。
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