研究課題
食材の調理・加工操作の中でも,基本的な加熱操作のうち,本研究では,最も高温を用いる焙煎法に着目してて検討して来ており,本年度は研究の総括である。比較的熱安定性の高いポリフェノールでも,200℃付近の焙煎加工温度に至ると,その化学構造が変化する。その化学構造の変化は,ポリフェノールの食品機能の変化に直結する。本研究では,多様なポリフェノールの中でも,穀類に多いフェノール酸を取り上げ,これらの焙煎反応生成物の化学構造の変化と機能の変化(新規発現をについて究明している。これまでのところ,フェノール酸のうち,カフェ酸,フェルラ酸,シナピン酸の焙煎反応と,その反応生成物について,化学構造の解明を行って来た。その結果,カフェ酸の高温反応物は,フェニルインダン骨格を有し,フェルラ酸及びシナピン酸ではフェニルインダン型化合物は生成せず,直線型にカップリングした重合物の生成が主であること報告した。同時に,これらの生成物の食品健康機能として,一般的な抗酸化性に加えて,生活習慣病の痛風抑制効果が期待できるキサンチンオキシダーゼ阻害能(XOI)を測定し,比較した。なお,反応生成物(混合状態)のXOIはカフェ酸>フェルラ酸>シナピン酸であった。今年度,再度単離精製を行ったフェルラ酸,シナピン酸の焙煎反応物19種に関して,同一条件でXOIを測定したところ,フェルラ酸からの反応生成物に関しては,重合化度が高くなるほどXOI活性が高いが,シナピン酸からの生成物にはそのような傾向がなかった。一方,抗酸化に関連するラジカル消去能においては,逆にフェルラ酸反応物の活性増強はあまり認められず,シナピン酸の反応生成物には,増強効果が認められた。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Buioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 87 ページ: 114-118
10.1093/bbb/zbac173