研究課題/領域番号 |
20K02381
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
李 秀眞 弘前大学, 教育学部, 准教授 (30588926)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コロナパンデミック / 地方移住への関心 / 生活満足度 / 夫婦間役割分担 / 高齢夫婦 |
研究実績の概要 |
今年度の成果は、①学術論文の学会誌への掲載、②韓国と日本の学会における国際シンポジウムのコメンテーター、③日本と韓国の高齢者に対する質的調査の3つである。第1に、学会誌へ2本の学術論文を掲載した。コロナパンデミックを経験しながら、生活にはどのような変化があったのかについて研究を進めた。①『コロナパンデミック以降、働き方の変化と新しいライフスタイルの探索』(家族資源経営と政策、26(3) pp. 87-106)では、コロナパンデミック以降の2時点(コロナパンデミック直後と2年後)において、働き方、地方移住に対する関心、生活満足度等の比較を通して、コロナパンデミックが長期化する中で人々が追求する新しいライフスタイルの可能性を検討した。その結果、退職・引退を迎える高齢者において、コロナパンデミック以降地方移住に関する関心が高まったことが確認できた。②『夫婦間役割分担と家事・家族ケア時間に影響を与える要因』(家族資源経営と政策、27(1) pp. 53-65)では、コロナパンデミック以降、夫婦間の役割分担、家事・家族ケア時間にどのような変化があったのかを検討した。その結果、夫婦間の役割分担において、夫の役割が増加した方向に変化したことが確認できた。第2に、日本家政学会家族関係学部会第42回家族関係学セミナー公開シンポジウム「ポストコロナ時代の家族」においてコメンテーターを務めた。コロナパンデミックを経験しながら、社会サービスと福祉政策の限界、家族が依然として社会安全網として代替不可能な役割を遂行していることが話し合われた。ただ、例えば、単身世帯が50%以上を超える家族形態のなかで、家族が代替不可能な役割を遂行することを強調することには少し注意が必要であることも話し合われた。第3に、日本と韓国における量的調査をもとに、退職・引退を経験した高齢者対する質的調査を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ渦における生活様式が捉えられる内閣府の公開データを用いて、コロナパンデミックを経験しながら、生活にはどのような変化があったのかについての研究、コロナパンデミック以降、夫婦間の役割分担、家事・家族ケア時間にどのような変化があったのかについての研究を行った。世代間の比較を通して、退職・引退を経験した高齢者の生活を捉えることができた。また、日本と韓国の比較が可能なデータを用いて、日韓比較研究を行い、学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、退職・引退を経験している高齢者を対象としたインタビュー調査を計画している。2022年度にもインタビュー調査を行っているが、論文執筆のためには対象を増やす必要がある。第2に、大量調査データ分析を通して、日本と韓国における高齢化の現状および高齢者対策の類似点および相違点に着目し、日本と韓国の二国間比較の観点から、引退・退職経験が高齢者の生活に及ぼす影響等についての分析を進め、学会発表を行ったが、それを元に学会誌への投稿・掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、退職経験者4名の方に予備調査としてインタビュー調査を実施し、その結果を踏まえて質問内容の修正等を行ったが、新たな退職経験者とのインタビュー調査が少し滞り、次年度使用額が発生している。次年度使用額については、次年度のインタビュー調査およびSSCI英文論文掲載のために使用する予定である。第1に、インタビュー調査は、退職・引退を経験している人を対象に、経済生活、生活意識、生活時間、生活行動、夫婦関係、生活満足度に関して調査を予定している。2022年度にもインタビュー調査を実施しているが、論文執筆のために対象者を増やす必要があることから追加の調査を計画している。第2に、大量調査データをもとに、日本と韓国の二国間比較の観点から分析した論文をSSCIに掲載するために必要な経費として使用する予定である。
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