本研究は、秋田県を対象に、ヒートショック関連死因の死亡率に対する地域の気候、住宅性能、生活習慣の影響を分析し、住環境向上による健康増進に役立つ手法と資料の提供を目的とした。 最終年度は、①秋田県内市町を対象に、直近で利用可能な2018年の住宅統計、死亡統計、気象データ、生活習慣調査データを整備し、主な死因の標準化死亡比EBSMRを算出し、それと気象・住宅・生活習慣要因との相関分析を行った。その結果、心不全死亡率は、全ての窓が複層の断熱住宅の普及率が高いほど低いものの、外気温が低いほど高くなった。これは、断熱住宅の普及が不十分で、寒冷な気候の影響を解消できていない現状を示している。更に脳梗塞死亡率は、全てまたは一部の窓が複層化された住宅の割合が高いほど、かつ寒冷な方が死亡率が高く、寒い地域で一部の窓だけが断熱化された住宅割合が高いがその性能が不十分なため死亡率の低下につながっていない実態を示した。この結果は、県の住計画基本計画が省エネ・健康住宅の指標として全部又は一部の窓の断熱化を掲げているが、それが健康増進には不十分であることを示している。また、これらの結果を「あきた健康・住宅マップ」として資料化した。②県内市町村単位と全国の都道府県単位での特徴を併せて把握し、癌以外の死亡は冬季に増加することから、年間の年齢調整死亡率とその冬季増加率を算出し、地域を9つの区分に分類した。これにより、温暖地ほど冬季死亡増加率が高く対策が必要であること、また北東北と北関東の年間死亡率が高く、寒冷地域での断熱普及と性能向上が不十分であることを示した。 研究全体を通して、所期の手法開発とその有用性と限界を把握し、秋田県と北東北3県を例にした分析と資料の作成ができた。成果の周知が十分でないため、令和6年4月に東北の住宅事業者向けにニュースレターを配布済みで、10月には講習会を実施する。
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