研究実績の概要 |
本研究の目的は、老いの価値を再検討し、大衆長寿化が進行する人生100年時代に対応した、高齢者になるための新たな「ライフモデル」を構築することにある。本研究の独自性は、学校教育においても初等中等学習指導要領において認知症理解を進める必要性が指摘されていることをふまえ、現在の高齢者のみならず、子ども期・青年期にある次世代にとっても将来を見据えて有用なライフモデルを企図する点にある。 そこで高校生の加齢意識・高齢者観・老い方についての意識を明らかにするために、2021年11月に全国の高校生モニター1,000人を対象としたWeb調査(委託先:調査会社ネオマーケティング)を実施した。引き続き、2022年に韓国の高校生にも同様の調査を行うことを追加で計画した。そこで研究期間を1年延長し、韓国の老年社会学研究者で共同研究の実績がある金珠賢氏(忠南国立大学社会科学大学教授)に調査・研究協力を依頼し、2023年5月に韓国で高校生モニター700人を対象としたWeb調査(委託先:調査会社HankookResearch)を実施した。 日本・韓国ともに出生率が低下し、高齢化が急激に進行するなか、人生100年時代を生きる高校生がどのような加齢意識、エイジズム意識、将来の生き方指標を想定しているのかを比較検証し、日本の高校生がいだくライフモデルを明らかにした。その結果、日本の高校生は①高校における高齢期教育をより深く理解し、理念的には人生100年時代についてより肯定的な受け止め方をしているが、その一方で②高齢期への不安はより強く感じていること、③高齢者への差別や偏見は少ないと認識しているものの、④高齢者イメージは否定感が強く、エイジズム行為はより行っていること、⑤同居規範など伝統的家族規範により囚われていた。高齢者世代とより積極的に親密な交流をおこなう必要性が急務であると指摘できる。
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