本研究期間では、胆石発症のモデルマウスになりうる、コレステロール食(1.5%コレステロール+0.5%コール酸)を継続的に投与したPPARalpha遺伝子欠損マウスの肝臓の脂質分析を実施してきた。1. 野生型マウス(コントロール食投与)、2. 野生型マウス(コレステロール食投与) 3. PPARalphaノックアウトマウス(コントロール食投与) 4. PPARalphaノックアウトマウス(コレステロール食投与)の4群のマウスの肝臓から抽出した脂質を比較した。コレステロールを投与したマウスでは、野生型マウス、PPARalpha欠損マウスとも、肝臓中の中性脂肪及びコレステロールの量が顕著に増えていることがわかった。抽出した脂質は、 中性脂質と酸性脂質に分け、それぞれの脂質について、リン脂質の組成、スフィンゴ糖脂質の組成を調べた結果、主な中性脂質には、ホスファチジルコリン、ホスフィアチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリンなどが観察された。酸性脂質としては、糖脂質のガングリオシドGM2と推定される脂質が認められた。TLC解析の結果、4群のうち、4.のコレステロール食を投与したPPARalpha欠損マウスのGM2にのみ、他群マウスのGM2には存在しない移動度の低いスポットが存在し、質量分析の結果m/z42大きいGM2であることが判明した。 2023年度は、GM2の糖鎖に含まれるシアル酸がN―グリコリル型であることを質量分析によって確定した。 さらに、上述のGM2の質量数がm/z 42移動したことの原因を調べるために、4群のガングリオシドGM2のGC-MSによる脂肪酸組成分析を実施した。その結果、いずれのGM2も主たる脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リグノセリン酸であり、m/z42に相当する違いは検出されなかった。また遺伝子解析の準備を進めた。
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