| 研究課題/領域番号 |
20K02396
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| 研究機関 | 同志社女子大学 |
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研究代表者 |
吉田 香 同志社女子大学, 生活科学部, 特任教授 (10336787)
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| 研究分担者 |
魏 民 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (70336783)
北村 真理 武庫川女子大学, 食物栄養科学部, 准教授 (40369666)
寺本 勲 (木俣勲) 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (20153174)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | ミネラル / 過剰摂取 / サプリメント / 動物行動試験 / 使用実態調査 / 学習・記憶障害 / 老人性認知症 / マウス |
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| 研究実績の概要 |
サプリメント中にはミネラルを多く含むものがあり、食品と合わせた摂取により過剰摂取が起こる可能性がある。Zn、Cu、Mn、Feは脳神経変性との関係が注目されている微量ミネラルである。我々はこれらミネラルを加齢マウスに長期間投与すると、学習・記憶能の低下が起こることを明らかにした。多量ミネラルであるCaについて、近年、サプリメント摂取により高齢女性の認知症リスクが上昇する可能性があることが報告されている。このため、昨年度よりCaと脳神経変性との関係を調べている。加齢雌性マウスに0、250、500、1000ppm Ca水溶液を25週間飲水投与後、Y字型迷路試験（YT）、新奇物体探索試験（ORT）、受動回避試験（PA）を行った。YTは短期記憶、ORTは視覚認知記憶、PAは長期記憶の指標となる行動試験である。その結果、1000ppm投与でPA、ORTでの学習・記憶能に若干の低下が示された。今年度は、この結果を検証すべく、用量を1000、2000、3000ppmに増やして30週間投与し、学習・記憶能を調べた。その結果、1000ppmに比べ、2000、3000ppm投与でORTでの記憶能に低下傾向が見られた。この結果より、Caの長期間・過剰摂取により、視覚認知記憶が低下する可能性が示唆された。
Webでサプリメントの使用実態調査を行った結果、複数種類のサプリメントを毎日、3年以上飲用している中高年が多く、この回答をした人は食事に気を使っている人が多いことが明らかになった。また、調査で飲用の多かった代表的なサプリメントを市場より購入し、ミネラル分析をした。パッケージ記載の1日摂取目安粒から1日ミネラル摂取量を計算すると、食事摂取基準の推奨量や推定平均必要量を超えるものがあった。以上の結果より、食事とサプリメントを合わせた摂取により過剰摂取となる可能性が示された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、26週令雌性マウスにCa 0、1000、2000、3000ppm水溶液を30週間飲水投与後、Y字型迷路試験（YT）、新奇物体探索試験（ORT）、受動回避試験（PA）により学習記憶能の低下が起こらないか調べた。その結果、Ca 2000、3000ppm水溶液の30週間投与により、短期記憶の指標であるYTや長期記憶の指標であるPAでは記憶能の低下は認められなかったが、視覚認知記憶の指標となるORTで記憶能の低下傾向が見られた。以上の行動実験の結果より、Ca過剰摂取により視覚認知記憶の低下が起こる可能性が示された。そのメカニズム解明のため、行動実験終了後、マウスより海馬を摘出し、DNAマイクロアレイにより、ミネラルによる酵素、受容体、転写因子などの遺伝子発現の変化を調べる予定であったが、これに関しては、まだできていない。
サプリメント使用実態調査に関しては、アンケート受託会社にWebでのアンケート収集を依頼することにより幅広い年代よりアンケートを回収することができた。アンケート結果より、中高年では複数種類のサプリメントを毎日、3年以上飲用している人が多く、さらにその人たちは食事に気を使っていることが明らかになった。また、調査で飲用の多かった代表的なサプリメントを市場より購入し、サプリメント中のミネラル含有量を調べた結果、食事摂取基準の推奨量や推定平均必要量を超えるものがあった。これらの結果より、食事とサプリメントを合わせた摂取により過剰摂取となる可能性を示すことができ、順調に進めることができている。
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| 今後の研究の推進方策 |
今年度、26週令雌性マウスにCa 0、1000、2000、3000ppm水溶液を30週間飲水投与後、Y字型迷路試験（YT）、新奇物体探索試験（ORT）、受動回避試験（PA）により学習記憶能の低下が起こらないか調べた結果、Ca 2000、3000ppm水溶液投与により、視覚認知記憶の指標となるORTで記憶能の低下傾向が見られた。しかし、短期記憶の指標であるYTや長期記憶の指標であるPAでは記憶能の低下は認められなかった。YTやPAは海馬が関与すると言われている行動試験である。一方、ORTでは海馬と嗅内皮質が関与するとされている。ORTでのみ記憶能が低下したことから、海馬体-嗅内皮質に存在するニューロンの障害がCaにより起こっている可能性がある。次年度は、この障害が起こるメカニズムの解明を行うため、脳のDNAマイクロアレイにより、Ca投与による酵素、受容体、転写因子などの遺伝子発現の変化を調べ、マウスの学習・記憶能低下に関わる因子を見つける。さらに、免疫組織化学的染色によりタウ蛋白質のリン酸化等の脳神経の変性、脳神経炎症反応の指標となる活性ミクログリアの発現及び酸化ストレスを調べ、Caが脳神経に与える影響について調べる。
CaとZnはいずれも神経伝達を調節する因子として学習や記憶に重要な役割を持つと考えられている。しかし、シナプス後神経にCaとZnが過剰に流入すると神経毒性を示すことが知られている。このため、これまでの研究でみられたZnによる学習・記憶能の低下がZnとCaの組合せ投与により増強されるかどうかを調べることは重要である。加齢マウスに30週間ZnとCaの組合せ投与し、行動試験を行い、学習記憶能の低下が起こるかを調べる。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
今年度、Ca投与試験終了後のマウスの海馬よりｍRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を依頼する予定であったが、実験に遅れが生じ、年度内にマイクロアレイの受託解析の依頼ができなかった。そのため、受託研究費が未使用となっている。次年度早々、マイクロアレイの受託解析の依頼をする予定である。
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