研究課題/領域番号 |
20K02397
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
安武 健一郎 中村学園大学, 栄養科学部, 准教授 (00516726)
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研究分担者 |
熊原 秀晃 中村学園大学, 栄養科学部, 准教授 (40389367)
藤井 京香 中村学園大学, 栄養科学部, 助手 (50846673)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知症 / グループホーム / 栄養状態 / MNA-SF / 食事 / 身体機能 / 筋肉量 / 筋力 |
研究実績の概要 |
本申請課題は、認知症対応型共同生活介護(以下、グループホーム)入居者の低栄養に起因した二次性サルコペニアの重症化予防に資する栄養管理の探究を目的として、入居者の栄養・身体機能指標と食事内容・食事摂取量の関連を探索するものである。 令和2年度は、グループホームに入居する認知症者100例と、地域在住の非認知症者(対照群)100例を研究対象者の登録を目標としていたが、新型コロナウイルス感染症流行下での本研究対象である高齢者層への対面接触が困難となったため、認知症者82例のみの登録に留まった。当初の計画では、研究対象者の登録期間を令和3年11月までとしていたが、新型コロナウイルス感染症にかかる社会情勢を考慮し、登録期間の延長、実施項目の変更、対象者数の縮小などについて検討する必要があるかもしれない。 研究に登録した82例の対象者のうち、40例の高齢女性に対して認知症の重症度、栄養状態の判定、日常生活動作、直近の血液検査、身体組成、握力および脚伸展力を含む測定を完了した。中間解析として認知症高齢女性の40例(年齢中央値:90.5歳)のデータを検証した結果、MNA-SFによって対象の82.5%が低栄養または低栄養のリスクと判定された。また、栄養状態が良好であるほど、生体インピーダンス分光法による下肢筋肉量指数と最大握力値は有意に高値を示した。グループホームの高齢入居者を対象に、栄養状態、筋肉量および筋力の水準を調査した研究は、我が国はもちろん国際的にも充分にないことから、プレリミナリーな結果ではあるが、今後の栄養管理を充実させるための重要な基礎資料を得た。 今後、新型コロナウイルス感染症の社会状況の好転を待ち、栄養アセスメントおよび身体機能アセスメントができていない対象者への測定を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請課題は、グループホーム入居者の低栄養に起因した二次性サルコペニアの重症化予防に資する栄養管理の探究を目的するものである。当初の令和2年度の計画は、(1)5施設以上のグループホームと研究連携体制を構築すること、(2)研究連携グループホームに入居する認知症者100例の代諾者から同意を得て、栄養アセスメントおよび身体機能アセスメントを実施すること、(3)対照群として、地域在住の非認知症者100例より研究の同意を得て、栄養アセスメントおよび身体機能アセスメントを実施することであった。 令和2年度の実施状況は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、グループホームへの立ち入り、入居者および地域住民との接触に重大な制限がかかったため、研究の進捗は当初の計画よりも遅れている状況である。しかしこのような状況下の中でも、(1)は5施設との研究連携を構築できた。また、(2)は82例の研究登録が得られ、40例を対象に実質的なデータの収集ができた。40例の認知症高齢女性(年齢中央値:90.5歳)についての中間解析では、プレリミナリーな結果ではあるが、グループホーム入居者の栄養状態と筋肉量および筋力の関連性およびその水準を示唆した意義のある基礎資料を得ることができたと考えられる。一方、(3)については、対象者の募集が全くできていない状況である。以上の現状を鑑みて、上記の通りの進捗状況とする。 現在も新型コロナウイルス感染症の感染拡大は続いており、短期的に対象者数を確保することは困難であることから、研究計画または実施項目の一部変更の必要性について検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究計画は令和2年度に引き続き、研究連携グループホームに入居する認知症者および地域在住の非認知症者(対照群)の研究登録を行い、順次、栄養アセスメントと身体機能アセスメントの実施を予定している。また、グループホームにおける食事の実態調査の実施を予定している。しかし、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、グループホームへの立ち入りや地域住民との接触には、今もなお強い制限がかかっており、研究進捗の遅れを取り戻すのは容易でない状況である。これに対して、研究目的の達成に影響がない範囲で、当初の研究計画を臨機応変に見直す必要性があると思われる。具体的には、研究計画の後ろ倒しによる対象登録期間の延長、実施項目の変更または対象者数の縮小などの必要性について検討する。 グループホームで提供されている食事の実態調査では、食事提供量の栄養素等含有量について横断調査を行う予定であるが、介護者への協力を得るなど、コロナ禍においても実現できそうな精度の高い調査方法を模索している。しかし、研究の実施が介護者の実務に影響がなるべく出ないよう、各研究連携施設の介護者と丁寧に議論や意見交換を行う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度の予算の大部分は、対象者の栄養アセスメントに用いる身体組成分析装置(Inbody S10)の中古品のために計上していた。しかし、予算内で購入できる同機器を入手できなかったため、予定よりも大幅に少ない金額の計上となった。 令和4年度以降の研究を進めるに際し、身体組成分析装置の購入を急ぐ必要があるため、代替え機器として、Imp SFB7体組成計を用いることとし、購入を行うよう計画している。
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