研究課題/領域番号 |
20K02405
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
薩本 弥生 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (10247108)
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研究分担者 |
島崎 康弘 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20584270)
田中 英登 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (60163557)
田中 稲子 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60345949)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱中症予防 / 温熱的快適性 / ペルチェ素子冷却法 / 浴衣 / 吸引型遠心ファン / 高経年集合住宅 / 高齢居住 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
暑熱環境時の熱中症予防のため温熱的に最適な条件を明らかにするため被服環境,屋外環境,居住環境に注目し人体整理や環境温熱要素に関する以下の4つの研究を行った. コロナ禍での熱中症対策に関して以下の2つの研究を実施した.①「感染症予防対策マスク着用による熱中症リスク」は,軽運動負荷時の不織布マスク着用時の生体への影響について評価し,マスク着用はほとんど影響なく,熱中症リスクは高まらないことを示した.②「ペルチエ素子冷却法を用いた効果」は,携帯性,持続性に優れた体冷却法の開発を目指す基礎実験を実施した(田中英登). 浴衣着装時の温熱的快適性向上のため,特に蒸れを感じる帯内に吸引型遠心ファンを設置し,効果検証のため,ファンの有無で比較実験を行った.その結果,絶対湿度,心拍数が有意にファン有りで低くなり,主観申告で快適感も向上することが明らかとなった(薩本). 無断熱の高経年集合住宅の高齢居住を対象として,居住階および通風・冷房行為等が夏季の室内温熱環境や熱中症の発症リスクへ及ぼす影響をシミュレーションによって分析した.最上階は最下階よりも天井温度が約2度高くなるが,屋上への遮熱塗料塗布よりも通風・冷房行為の違いの方がWBGT低減に大きく寄与することが分かった(田中稲子). 環境中での温熱快適性は,気温,湿度,放射温度,気流の環境側4要素と代謝および着衣の人体側2要素により主に決定される.令和2年度はコロナ感染症の影響による実験制限もあり,都市構成材料の改質や着衣素材の工夫がどの程度温熱環境改善に寄与できるかに関して数値解析を中心に検討し,感度の高い施策の方向性を得た(島﨑).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍でニーズの高まった感染症予防対策マスク着用による熱中症リスクに関する研究を実施し有用な成果を得た.研究環境の制限により数値解析等の理論的なアプローチによる研究が実施された.熱中症予防システム構築に向け,居住環境や建築素材や被服素材の改良の温熱効果に関する数値解析による温熱負荷に関する成果が得られた.人の温熱負荷軽減対策に関してはペルチェ素子を用いた冷却法の効果や吸引型遠心ファンによる効果を定量的に検証ができたため,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
Two node modelにより運動時の温熱生理応答を予測するモデルを組み込むWBANセンサシステムにおいて必要となる生体パラメータを算出するための活動量計を選定し,時々刻々の生体情報や環境情報をもとに状態を判別するシステムを構築する.一方,熱中症予防が重要な課題である高齢者は運動時の若年者とはモデルの修正が必要と考えられる.比較的健康な高齢者を被験者に生活実態を把握するための問診票を作成し質問紙調査をするとともに自宅での環境,生理データの実態調査を行う.以上のデータを蓄積し,若年者の運動時あるいは高齢者の日常生活時の常時モニタリングシステムへ応用し,取得したデータからの熱中症行動・状態モデルの構築と新たな評価指標による熱中症予防支援システムを構築する.また,暑熱環境時の熱中症予防のため温熱的に最適な着衣の条件を検討するため,着衣の熱水分移動性能への風,動作および着衣のデザインによる影響を評価するシステムを構築する.特に透湿防水性パーカ着装時の着衣の蒸れおよび閉塞型の靴着用時の足の蒸れは未だ解決できない問題であるため,引き続き透湿防水パーカ内環境および靴内環境の評価実験を行い,モデルの構築をめざす.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で一部の被験者実験の実施ができなかったため、謝金の支出が予定よりも少なくなった。学会発表が沿革になり、旅費の支出がなかった。そのため、物品費の購入割合が多くなり、次年度に211322円繰越すことにした。 その他、実験に必要なロガの購入を行い、次年度の実験の準備を進めた。 次年度には熱中症対策としての夏季の学童用の帽子や通学用バッグ等の性能評価のための物性試験や被験者実験を実施予定であり、その際、購入したロガを活用する予定である。
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