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2021 年度 実施状況報告書

熱中症予防支援システム構築のための人-着衣-環境系の評価

研究課題

研究課題/領域番号 20K02405
研究機関横浜国立大学

研究代表者

薩本 弥生  横浜国立大学, 教育学部, 教授 (10247108)

研究分担者 島崎 康弘  豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20584270)
田中 英登  横浜国立大学, 教育学部, 教授 (60163557)
田中 稲子  横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60345949)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード熱中症予防 / 温熱快適性 / 不織布マスク / 冷却パッド / 通学用帽子 / 高齢者 / 生活空間 / ふく射
研究実績の概要

マスク着用による運動時の熱中症リスクについて検証するため,不織布マスク着用で中等度運動時の熱中症リスクの評価を行った。環境温25,30,35℃(湿度60%)の条件下で計40分の運動を実施し、生理指標(心拍数、体温、血中酸素濃度、発汗量)及び心理指標(主観的温度感覚、温熱的快適感など)を測定した。心拍数,顔面部皮膚温及び温度感覚は環境温35℃マスク着用時に高くなることが示され、35℃環境下における中等度以上の運動は、生体負担度がマスク着用により大きくなることが示唆された(田中英登).
通学時の児童の温熱快適性向上のため,通学用リュック用の背面パッドと、通学用帽子の開発を試みた。冷却パット2種とパッド無の3条件で被験者実験を行い、平均皮膚温、衣服内湿度等で冷却パッドの素材やデザインの工夫の効果が見られた。通学用帽子に関してYE(従来品)、WH(透湿・通気改良)、FM(透湿・通気改良+換気口有)の3条件で被験者実験を行い、蒸れ感・べとつき感等、平均皮膚温、耳内温等において素材や換気口による効果がみられた(薩本).
高齢者の生活空間における熱中症リスクを明らかにするために,屋外の駅利用空間で55~65歳の中高年男性11名を対象として,空調と非空調を含む駅空間の移動を伴う環境下での生理・心理反応を把握した。若年者と比較して温熱感覚が寒い側に1pt程度シフトすることが分かった。また,1カ月以上の継続的な運動をする中高年者は若年者に近い温熱感覚を有する可能性が示唆された(田中稲子).
屋外における温熱快適性向上を目的として,ふく射環境形成に影響の大きい舗装素材や着衣素材の性能評価手法の検討や定式化に取り組んだ.舗装素材として保水性ブロックに着目し,蒸発効率の新評価法を構築した.着衣素材のふく射特性の測定技術の確立のため,屋外フィールド実験と光学系における測定の精度を比較・検討した(島﨑).

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(理由)コロナ禍でニーズの高まった感染症予防対策マスク着用による熱中症リスクに関する研究を実施し有用な成果を得た.熱中症予防システム構築に向け,生活空間や建築素材や被服素材の温熱負荷に関する成果が得られた.高齢者と若年者の温熱負荷に関する心理的な差異が明らかになった.人の温熱負荷軽減対策に関して冷却パッドや帽子の冷却法の効果を定量的に検証ができた.以上より,おおむね順調に進展している.

今後の研究の推進方策

熱中症予防のため被服環境,屋外環境,居住環境に注目しそれぞれの観点からの研究をさらに進めるとともに活動時の温熱生理応答を予測するモデルを組み込むWBANセンサシステムにおいて必要となる生体パラメータを明らかにし,時々刻々の生体情報や環境情報をもとに状態を判別するシステムを構築する.一方,熱中症予防が重要な課題である高齢者は運動時の若年者とはモデルの修正が必要と考えられる.比較的健康な高齢者を被験者に生活実態を把握するための問診票を作成し質問紙調査をするとともに自宅での環境,生理データの実態調査を行う.以上のデータを蓄積し,若年者の運動時あるいは高齢者の日常生活時の常時モニタリングシステムへ応用し,取得したデータからの熱中症行動・状態モデルの構築と新たな評価指標による熱中症予防支援システムを構築する.また,暑熱環境時の熱中症予防のため温熱的に最適な着衣の条件を検討するため,着衣の熱水分移動性能への風,動作および着衣のデザインによる影響を評価するシステムを構築する.特に感染症予防対策マスクの評価および、透湿防水性パーカ着装時の着衣の蒸れは未だ解決できない問題であるため,引き続き透湿防水パーカ内環境の評価実験を行い,モデルの構築をめざす.

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍で一部の被験者実験ができなかったため、謝金の支出が予定よりも少なくなった。学会発表が遠隔になり旅費の出がなかった。そのため、物品費の購入割合が高くなり、81450円繰越すことにした。次年度には熱中症対策としての被験者実験を実施予定であり、その際、繰り越し分を活用する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (6件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 暑熱環境下の不織布マスク着用による熱中症リスクからみた運動時の身体諸機能及び主観的感覚に及ぼす影響2022

    • 著者名/発表者名
      高須利喜,陳静,田中英登
    • 雑誌名

      日本運動生理学雑誌

      巻: 29 ページ: 11-18

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 多様な温熱環境における移動が中高年の温熱感覚へ及ぼす影響 ―地下駅Aにおける被験者実験に基づいて―2022

    • 著者名/発表者名
      君島裕輝,田中稲子,吉田聡
    • 雑誌名

      2021 年度(第92回)建築学会関東支部研究報告集,環境工学

      巻: - ページ: 13-16

  • [雑誌論文] 乳幼児用おむつの熱水分移動性能と温熱的快適性2021

    • 著者名/発表者名
      薩本 弥生 ,今朝丸千恵
    • 雑誌名

      横浜国立大学教育学部紀要. I, 教育科学

      巻: 5 ページ: 103-110

    • DOI

      10.18880/00014293

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 防護服着用時の熱ストレスについて2021

    • 著者名/発表者名
      薩本弥生
    • 雑誌名

      安全と健康

      巻: 23 ページ: 337-339

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 高経年集合住宅における居住階及び通風・冷房行為が高齢者の熱中症リスクに及ぼす影響2021

    • 著者名/発表者名
      可児綾加,田中稲子,張晴原
    • 雑誌名

      日本建築学会大会(東海)学術講演会梗概集,環境工学

      巻: - ページ: 1113 -1114

  • [雑誌論文] Improving outdoor human-thermal environment by optimizing the reflectance of water-retaining pavement through subjective field-based measurements2021

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Shimazaki, Masashige Aoki, Kenji Karaki, Atsumasa Yoshida
    • 雑誌名

      Building and Environment

      巻: 210 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.buildenv.2021.108695

  • [学会発表] 保水性舗装の蒸発効率測定法の提案と実測2022

    • 著者名/発表者名
      一ノ瀬洸,島﨑康弘,袁継輝,木下範起
    • 学会等名
      第23回空気調和・衛生工学会中部支部学術研究発表会
  • [学会発表] 成人用おむつの熱水分移動性および温熱的快適性評価2021

    • 著者名/発表者名
      薩本弥生, 手塚香代
    • 学会等名
      繊維学会
  • [学会発表] スポーツ用パーカーの換気口が有風時の温熱快適性に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      薩本弥生,波羅香奈子
    • 学会等名
      日本繊維製品消費科学会
  • [学会発表] 熱中症対策のための通学リュック背面冷却パットの快適性評価2021

    • 著者名/発表者名
      薩本弥生, 髙山彩菜, 大矢幸江
    • 学会等名
      人間-生活環境系学会
  • [学会発表] 感染症予防不織布マスク着用時の夏季熱中症リスクについて2021

    • 著者名/発表者名
      田中英登
    • 学会等名
      日本家政学会被服衛生学部会講演会
    • 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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