研究実績の概要 |
加熱野菜は固体に液体が分散したコロイド食品であり,そのおいしさは加熱調理後も変化する。しかし,その構造に着目した加熱,保存,再加熱過程での変化や調味料の影響に関する研究はなされていない。本研究では,加熱野菜のおいしさに加熱,保存,再加熱がどのように影響しているのか,クックチルシステムでもおいしさは維持できるのかを検討している。 令和2,3年度は,「砂糖5%,塩2%」「砂糖2.5%,塩1%」の調味液で数種類の野菜を加熱し,加熱,保存時の調味料の浸透の程度,重量,体積,水分,テクスチャー変化,ペクチンの溶出量を検討した。その結果,加熱により野菜中の水分が溶出し,保存時に加熱溶液が流入,この水分増加に伴う重量増加と体積変化は一致せず,大根では保存時の調味液の内部への浸透により破断応力の低下が著しいことが明らかとなった。また,大根では調味液加熱において水加熱よりも煮汁中のペクチン量が有意ではないものの多いこと,低濃度の調味液での加熱,保存時の変化は,高濃度時と同様であるものの,その変化は小さいことが示された。 令和4年度は,令和2,3年度の結果を受けて,真空調理時の変化を大根,人参を試料として検討した。結果、真空調理では昨年度までに行った通常調理と同様に,大根の重量変化と体積変化は一致しなかった。また,通常調理で得られた結果と異なり,保存,再加熱時に破断応力の低下,可溶性ペクチン量の変化はみられなかった。可溶性ペクチン量の変化がみられなかった要因は,試料が2.5cm角であったこと,調味液が大根の50%であったために,内部まで浸透するNa量が少なかったこと,真空調理により煮汁へのペクチンの溶出が妨げられ,Ca架橋の形成が進行したことが要因であると考えられた。また、人参においては可溶性ペクチン量がわずかに増加し,ペクチンのエステル化度の違いと考えられた。
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