研究課題/領域番号 |
20K02409
|
研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
庄山 茂子 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (40259700)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 交通事故 / 高視認性安全服 / 小中高生 / 高齢者 / 反射材 / ヒヤリ経験 / 薄暮時 / 色彩 |
研究実績の概要 |
道路作業従事者の死亡事故を防ぐために作業者の視認性確保は非常に重要である。また、高齢者ドライバーの事故防止も課題である。そこで、3つの異なる建設現場を背景に8種の作業服(黒,水色,3クラスの蛍光イエローとオレンジレッドの高視認性安全服)を組み合わせた24サンプルをパソコン上に映し、女子学生20名が高齢者疑似眼鏡着用なし(若齢者群)と高齢者疑似眼鏡着用(擬似高齢者群)の2条件で作業者の目立ちの度合いを評価した。黒の作業服の目立ちの評価は、若齢者群と高齢者群ともに低く、水色は高齢者群において低かった。若齢者群と擬似高齢者群の比較では、すべてのサンプルで高齢者群の評価が低かった。3つの背景と高視認性安全服のクラスによる交互作用は、擬似高齢者群のみに認められた。作業者周辺の色彩を考慮した高視認性安全服の色彩とクラス選択の必要性が示唆された。 次に、交通事故防止のための反射材の活用実態を明らかにすることを目的に、熊本県内の小学生、中学生、高校生を対象に調査を行い、458名の回答を得た。小中高生の平常時の帰宅時間は、学年が上がるほど遅かった。どの天候でもヒヤリ経験があり、薄暮時間帯だけでなく明るい時間帯でのヒヤリ経験も多いことから、あらゆる天候や時間帯で人の視認性を高める対策の必要性が示唆された。反射材の認知は約80%であったが、所有の実態は45~54%であった。反射材は交通事故防止に効果があると約80%の小中高生が回答しているのに対し、薄暮時には、中高生は61~64%、小学生は40%が反射材を身につけていなかった。また、徒歩において、反射材を所有していてもヒヤリ経験をしていたことから、反射材が効果的に使用されていないことも示唆された。今後は、反射材を所持していない実態を踏まえ、誰もが身につけやすい形状で、視認性の高い色と着用位置の検証を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、高視認性安全服と反射材グッズに着目し、労働者や市民の安全を守ることを目的としている。2020年度から継続して、建設現場における視認性の評価実験を、画像処理ソフトを用いてシミュレーション画像を作成して実施した。背景と安全服の様々な色の組み合わせに対する評価実験を実際の工事現場において実施する予定であったが、事故対策の必要性から実験室内での被験者実験とした。実際の工事現場と同じ視環境が再現できたと考えている。また、COVID-19の影響により、感染防止の観点から実際に高齢者を対象に被験者実験を実施することができず、計画通りの内容で進めることはできなかったが、女子学生に擬似高齢眼鏡を装着してもらい、実験方法を変更する等の工夫をして、研究目的に沿った実験を行うことができた。その他、小学生、中学生、高校生の協力を得て、歩行者の立場から反射材の実態を明らかにする調査を実施することができた。これらのことから、研究計画全体においておおむね順調に遂行していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
夜間・薄暮時における歩行者の交通死亡事故率は高く、その対策が求められる。熊本県内の小学生、中学生、高校生を対象にした調査では、反射材の所有の実態は45~54%で、反射材を所有していてもヒヤリ経験をしていたことから、夜間の歩行者の視認性を高めることを目的に、市販の携帯しやすい反射材用品を用いて、異なる色と着用位置において反射材の視認性にどのような違いがみられるか被験者実験を行い、研究結果を順次報告する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、高齢者を対象にした被験者実験ができなかったことや、実際の工事現場の協力を得ながら現場で実験できなかったことから、2022年度使用額が生じた。次年度使用額とあわせて、あらたな実験や研究成果の発表及び報告等に伴う支出を予定している。
|