研究課題/領域番号 |
20K02411
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
舩津 保浩 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (90382481)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発酵調味料 / 消費者 / 嗜好 / 品質特性 / 可視化 |
研究実績の概要 |
今年度は発酵調味料である北海道産魚醤油製品の原料・製法及び成分特性(物理化学的成分及び呈味・香気成分)の調査を行った。先ず、原料や製法による分類で製品を14種類選択した。主原料となる魚介類はサンマ、ホッケ等12種類で5種類の混合タイプの製品もあった。また、赤身魚1種類、白身魚4種類及び魚類以外(エビ・タコ・貝類)7種類であった。次に、製法による分類では麹不使用3種類、米麹使用10種類及び醤油麹使用1種類で、スターター接種の有無別では、乳酸菌・酵母接種1種類、未接種13種類であった。また、醤油のブレンドは2種類で、その他は単一の魚介類を用いた製品であった。さらに、真空処理を利用した製品も1種類みられた。物理化学的特性とみると、色番は1~39、pHは4.0~6.5、滴定酸度(mL)は9.0~34.1、全窒素分(g/100 mL)は0.90~2.27、無塩可溶性固形分(%)は14~25であった。呈味成分を調査したところ、7種類有機酸が検出され、乳酸、酢酸及びピログルタミン酸が主要な有機酸であった。遊離アミノ酸はニンヒドリン法により22種類が検出され、総量(mg/100 mL)は2990~7698の範囲であった。また、主要な遊離アミノ酸はアスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、バリン、ロイシン、リジン等であった。香気成分は固相マイクロ抽出によるGC/MS分析により、79種類の成分が検出された。また、検出された成分は酸類12種類、アルデヒド類11種類、アルコール類12種類、ケトン類13種類、エステル類14種類、ピラジン類3種類、含硫化合物4種類、フェノール類4種類及びその他6種類に大まかに分類された。 北海道産魚醤油の品質について原材料や製法による分類から物理化学的性状、呈味成分や香気成分の特性が多様であることが分かった。これらの成分特性の違いが官能特性の違いに影響すると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、北海道産魚醤油の原料・製法及び成分特性(物理化学的成分及び呈味・香気成分)の調査を行った。しかし、全国的な新型コロナウイルス感染の影響で原料・製法の聞き取りから成分特性までの調査の進行がかなり遅延した。そのため無機質(ミネラル)の一部やオリゴペプチド態アミノ酸等の成分分析を実施できなかった。 次年度は遅延した北海道産魚醤油の成分特性の調査を実施していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
色調・化学成分分析データによる発酵調味料の評価については原材料・製法調査で分かった14種類の北海道産魚醤油の成分分析(無機質やオリゴペプチド態アミノ酸等)の分析を行う。原材料・製法と成分分析データとの関係を調査する。 発酵調味料の嗜好評価については北海道産魚醤油の官能特性を正確に定量したデータを得るため定量的記述分析法 [Quantitative Descriptive Analysis (QDA)]を導入し、味覚と嗅覚が正常で優れた表現力とコミュニケーション能力を有し、訓練を受けた分析型パネルを選定する。評価方法は線尺度法を用い、得られたデータの統計解析(Turkeyの多重比較法)を行う。ただし、QDA法についてはASTM(米国試験材料協会: The American Society for Testing and Materials)が推奨している手法に基づいて実施する。 色調・化学成分分析データと嗜好データとの相関性についてはQDA法による官能特性と化学分析データとのマッチングを統計解析手法により実施する。 コロナ禍でこれらの研究が順調に進行した場合は地域、年齢、食習慣を代表するような嗜好パネルを一般消費者より選定し、QDA法によって決定した評価項目を基にカテゴリー尺度法で評価したデータから消費者の好き嫌いに関する情報を得る。得られたデータより主成分及びPLSプリファレンスマッピングを作成する。最終的には嗜好データの地域間での相違を調査し、製品の品質特性が消費者のニーズにどのように対応しているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は新型コロナウイルス感染拡大のため当初予定していた「原料・製法の聞き取りから成分特性までの調査」の進行がかなり遅延した。そのため令和2年度に実施できなかった成分特性調査(無機質(ミネラル)の一部やオリゴペプチド態アミノ酸等の分析等)を令和3年度に行う予定である。また、次年度使用額については、令和3年度の請求額と合わせ、主に物品費(試薬・消耗品等)、人件費・謝金(アルバイト料等)、その他(施設使用料等)に使用する予定である。
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