研究課題/領域番号 |
20K02416
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
長嶋 直子 金城学院大学, 生活環境学部, 准教授 (30459599)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポリ乳酸繊維 / 天然色素 / 酵素 / 環境調和型 / ラッカーゼ / 染色 / 染色堅ろう度 / KES |
研究実績の概要 |
酸化還元酵素ラッカーゼの作用によって濃色な発色が得られた天然色素バイカリンを用いて、PLA布の染色を検討した。 まず、濃色で実用上十分な堅ろう性を有する染色条件を明らかにするために、次の3条件で染色を行った。バイカリンとラッカーゼを共存させた染色液でPLAを60分間染色(以下B/Lとする)、バイカリンにPLAを60分吸尽させたのち、ラッカーゼ溶液中で60分処理(以下AfLとする)、ラッカーゼ溶液中でPLAを60分浸漬処理したのち、バイカリン溶液で60分処理(以下PreLとする)。いずれも0.1M酢酸-酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH4.5)、温度は45、75℃とした。 その結果、染色後のPLA布のK/S 曲線は、PreL<AfL<B/Lの順に増大した。ラッカーゼの至適温度は45℃であるが、75℃の方が濃色となった。色素は分子量300程度の低分子であるが、ラッカーゼは高分子である。そのため、ラッカーゼが非晶領域に拡散できず、色素を酸化できず、PreLやAfLでは濃色に染色できなかったと考えられる。したがって、バイカリンとラッカーゼを単独でPLAに吸着させ繊維中で発色させるよりも、ラッカーゼで発色させたバイカリン溶液をPLA染色に用いる方が濃色に染まり、PLAのTg以上の処理がよいことがわかった。 次に、酵素濃度は一定で、バイカリン添加量を変化させ、75℃、60分、PLAを染色した。その結果、バイカリンの添加量増加に比例してK/S値も増加したが、一定以上の染浴濃度からはK/S値の増加は見られなかった。 染色堅ろう度試験の結果、洗濯試験の変退色が1級以下となり、非常に低い結果となった。引張強度は、未処理布を1とし相対強度で比較すると、ラッカーゼ処理PLA布は0.6、B/L布は0.5となり、強度は低下する傾向が認められた。染色温度が75℃であり、PLAのTg以上だったためと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度もコロナ禍での制約により、研究時間の確保は難しい状況ではあったが、2020年度の経験を踏まえ、できるだけ時間を確保することに努めた結果、概ね当初計画に沿って取り組むことができた。 しかしながら、風合いに関する測定に関しては、必要な染色布の準備に時間を十分とることができず、予備的な段階にとどまったため、次年度取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、次の2点について主に取り組む。 まず、2021年度に得られた成果、すなわちバイカリン/ラッカーゼ系で最も濃色に染色できた条件で、PLA布帛をあらためて染色し、染色後の風合いについてKES―FBシステムを用いて詳細に調べる。 次に、2021年度の結果、すなわち染色後のPLA布帛の強度低下が著しかったことを踏まえ、その抑制を期待して、綿繊維を混紡したPLA/綿混紡布帛を用いて、天然色素/ラッカーゼ染色を行う。染色条件は、2021年度と同じ条件すなわちバイカリン/ラッカーゼ水溶液を用いて最も濃色に染まった条件とし、PLA/綿混紡布帛を染色する。染色後のPLA/綿混紡布帛の表面色濃度K/S値および染色堅ろう度を調べる。さらに、染色前後のPLA/綿混紡布帛の強度、風合いについても調べ、染色後のPLA/綿混紡布帛が実用上十分な堅ろう性、物性および風合いを有するか検討する。
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