本研究ではICTを応用した遠隔医療支援および遠隔教育システムの有用性を検証した。総合周産期医療センターと地域の産科医院および中核病院と、情報通信機器を利用した遠隔医療ネットワークを構築し、実医療への応用を念頭に置いた医療コンサルトの運用を行い、その有用性を検証した。 方法は京都市内施設(総合病院3施設,産科クリニック2施設)に情報通信機器設置とドクターカーにスマートグラスを配備した。2022年度に導入したスマートグラスにより、ウェアラブルデバイスの特性を生かしたリアルタイムの【Doctor-To-Doctor遠隔医療支援】と、コロナ患児などの【感染隔離病室でのDoctor-To-Nurse支援】の運用を検証を実施した。なお当初予定していた遠隔講習は、コロナ禍における集合研修形式の学習形態自粛のため、自院スタッフを対象としたシステム構築のみにとどまり、他院との連携は未検証となった。 結果は、情報通信機器を利用して安価にシステム構築することができた。ビデオ会議システムは既存のプラットフォームを利用し、患者情報を共有した(診療支援/画像相談はおよど50件)。医療相談の結果で搬送となった症例は性分化疾患/呼吸障害/循環障害など6例であった。また、遠隔地の若手医師からの医療相談に対して、適時に十分な情報量をもとに支援可能であった。医療相談には至らなかった施設においては、地域間連携および遠隔ミーティングなどの運用検証にとどまった。医療従事者へのインタビューでは、遠隔地の医療者の心理的負担軽減が示唆され、当遠隔診療システム稼働状態そのものが地域連携のための社会基盤として有効に機能している可能性が示された。
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