研究課題/領域番号 |
20K02430
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
若木 常佳 福岡教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (90454579)
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研究分担者 |
宮本 浩治 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (30583207)
矢野 博之 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (40365052)
藤原 顕 福山市立大学, 教育学部, 教授 (60261369)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教師教育 / リフレクション / カリキュラム / 葛藤のメカニズム / 実習場面の工夫 / 「対話的自己」 / 「他者」 |
研究実績の概要 |
次の5点を追究した。1「対話的自己」の概念からジレンマ,葛藤のメカニズムの追究。これはコルトハーヘンはどういう形でジレンマ,葛藤のメカニズムが生じるかについて整理していないのではないかいう疑問に基づく。2実習場面の工夫。これは,自分の枠組みをリフレーミングできる感覚をどう育成するかという課題意識と他者の実践を自分の目で再解釈する過程が必要という考えに基づく。3カリキュラム構築のための材料収集①。学部対象のリフレクションの授業の実施と考察。4カリキュラム構築のための材料収集②。教育実習での体験を整理し,学部と教職大学院の接続状況を考察。5カリキュラム構築。教職大学院の実習指導の課題を踏まえ,自身の「対話的自己」や思考過程を追究し自覚する志向性の育成に寄与する実習のあり方に向かう実習プログラム試案を作成。145は,論文化した。また,本研究では,オランダの教師教育を参考とするため,教師教育の現場を視察する予定であった。しかし,コロナ禍で渡蘭が困難なことから,オランダの教師教育について講師を招聘してレクチャーを受け,日本型プログラムの考案の手がかりを得ようとした。 上記の研究に基づき,考案するカリキュラムには,実習や学習相互の関わりの中で見出された「他者」を受容・理解し見出された「他者」を自己の中に位置付けること過程,それらを用いてそれぞれに構築された独自の知やその構築過程を眺め直す過程が必要であると考えている。 1「自己探究に基づく教師のリフレクションの在り方」藤原顕 2021『福山市立大学教育学部研究紀要 9 pp.31-45 4「教師養成機関における実習に関する研究-学生の体験に着目して-」若木常佳2021『福岡教育大学研究紀要』70 pp.231-245 5「教職大学院での実習指導について -事例考察に基づくプログラムの再構築-」若木常佳2021 投稿中
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初立案した計画は,2020年度は「枠組みの模索と構築」であった。コロナ禍というアクシデントに見舞われ,オランダでのカリキュラムの具体化と実際場面での指導の視察はできなかった。しかし,【成果】として次の3点を挙げることができる。 【成果1】として学生・院生の成長過程を考える上で当然生じるジレンマ,葛藤のメカニズムについて追究し,「対話的自己」の概念からの手がかりを得たことである。【成果2】としてオランダの教師教育の状況を講師のレクチャーによって概括することと,視察予定先だったMarnix acadmyから「Marnix リフレクションモデル」を得ることができた。さらに今後におけるMarnixの視察の焦点化と,新たな視点からの視察候補を得ることができた。【成果3】として教職大学院の実習指導での課題を明らかにし,それを踏まえて自身の「対話的自己」や思考過程を追究し自覚する志向性の育成に寄与する実習のあり方を実現するための実習プログラム案を作成したことである。【成果4】としてカリキュラム構築のための材料収集のためのフィールドを確保し,それが同時に教員の研修となるように設計したことである。 上記の【成果1】から【成果3】は,「枠組みの模索と構築」に機能する内容である。【成果4】は,2021年度の「カリキュラムの具体化」に対する環境の確保となる。 課題としては,学部授業での学習・教職大学院授業での学習・それぞれの実習での学習内容について,研究者がそれぞれ所属する機関での具体や状況を明らかにして理想イメージの共有など,カリキュラムの具体化のための準備ができなかったことである。 上記から,2020年度の研究テーマであった「枠組みの模索と構築」についてはほぼ行われていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず,研究者がそれぞれ所属する機関での具体や状況を明らかにしてカリキュラムの理想イメージの共有を行う。次に所蔵機関での実施内容とそれに対する学生・院生の状況を検討し,自己探究に効果的な学習内容を見出す。最後にそれらを踏まえて「カリキュラムの具体化」に向け,次の4点についての具体を追究する。【リフレクション自体についての学習】【志向性形成のための学習】【実習場面で生じてくる違和感と葛藤に対する対応】【自己を知り,生かす方法を探るための自己探究】である。この過程では,オランダの教師教育の研究者とも連携する(オンラインで9月予定。可能であれば3月に現地視察)。 なお本研究では,より具体性のあるカリキュラムを構築しようとしており,学生・院生の学びの履歴の考察を計画している。そのため,上記の【】で示した4点についての学生・院生の学びの履歴とその考察を,所属する機関での状況に応じながら進める必要がある。 また,本研究は今後の学校現場での教師のリフレクション力育成への寄与という側面も持っており,宗像市教委と共同しリフレクションへの志向性に向かう学校現場での研修を考案して提案・実施することから,その内容と実際を考察する。このことは,学部・教職大学院・学校現場の連続性を考えることになる。 これらの研究により,2021年度は,学部・教職大学院・学校現場のそれぞれの特性を意識し,連続性のある〈リフレクションへの志向性の形成を促すカリキュラム〉の具体を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍というアクシデントに見舞われ,オランダでのカリキュラムの具体化と実際場面での指導の視察はできなかった。故に,渡航費や謝金関係の支出がなかったためである。
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