研究課題/領域番号 |
20K02437
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
湯川 嘉津美 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (30156814)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保育者養成 / 保育者の資格 / 保姆検定制度 / 保育法 |
研究実績の概要 |
2020年度は、第一に、近代日本の保育者の資格・待遇、保姆検定制度について、1925(大正14)年の文部省における欧米保育者養成制度の調査報告を中心に検討を行った。幼稚園令の立案に際し、文部省は1925年に「英国ノ幼稚園教育制度」「英国ニ於ケル幼稚園制度ニ就テ」「英国幼稚園保姆養成制度ニ就テ」という三つの調査報告をまとめた。従前より文部省がイギリスの保育学校制度に注目していたことは知られているが、これらの調査報告から、保姆養成制度についても、イギリスを参考に制度のあり方を検討していたことが明らかになった(「大正14年における文部省の欧米幼稚園・保姆養成制度調査-幼稚園令制定との関連に着目して-」日本保育学会第73回大会発表)。 第二に、保育所保姆の養成について、恩賜財団愛育会が実施した保育所保姆講習会を中心に検討を行った。愛育会は、戦前・戦時下の日本において母子保健や乳幼児の保護と教育、母親教育の推進に指導的な役割を果たした団体であるが、保育所保姆の養成にも力を注いでいた。そこで、愛育会における保育所保姆養成講習会の記録をもとに、保育所保姆養成の実際を描き出し、幼稚園保姆の養成とは異なる保育所保姆養成の特徴を明らかにした(「解説」『戦前期愛育会関係資料集成』全11巻、不二出版)。 第三に、保育者養成の中心科目であった「保育法」について、倉橋惣三著『幼稚園保育法真諦』(1934年)、東京女子高等師範学校附属幼稚園編『系統的保育案の実際』(1935年)を中心に検討を行い、そこにアメリカ新教育理論の受容やプロジェクト・メソッドの影響が認められることを明らかにした(「倉橋惣三における誘導保育論の成立-アメリカ新教育理論の受容-」橋本美保・田中智志編著『大正新教育の実践-交響する自由へ-』東信堂)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、予定していた史料調査が実施できず、また、図書館・資料館での閲覧制限により、十分な史料収集と検討ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に実施できなかった史料調査を行うとともに、研究計画に基いて、師範学校、女子高等師範学校、私立保姆養成機関における保育者養成の実態の解明を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の蔓延と緊急事態宣言の発出により、大学構内への立ち入り制限に加えて、国立国会図書館や都道府県の公文書館等の閲覧制限が長期間続いたため、物品購入や史料調査に大きな支障が出た。2021年度は2020年度に実施できなかった史料調査を可能な限り行うとともに、史資料の購入を早めに行い、当初の研究計画に基づいて研究を進める。
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