研究課題
最終年の用具開発に係る研究課題では、近年、注目を集めるようになったウォータースポーツのうち、SUP(Stand Up Paddleboard)に着目した。最終年の研究課題は、日本体育学会第71回大会(令和3年9月)で報告した。本研究では、最重度の身体・知的障害を有し、中には吸引、経管栄養等の医療的ケアを要する重度・重複障害児が参加可能となるよう「SUP」の用具開発を試みた。試乗の結果①サイドフロートを取り付けた工夫によりサーフボードが転覆することなく安定した滑走が可能、②子供がサーフボードから転落する事なくあぐら座位姿勢で乗ることが可能、③前方から後方のサーフボードを牽引することにより子供の水上滑走を可能とすることができた。活動中の子供からは、自主的に手を伸ばして川の水に触れる動きや体を起こして喜ぶ様子等が確認された。保護者への聞き取りでは「陸上とは異なる身体の使い方をして良い運動になる」「水上ならではの揺れを感じながら自分でバランスをとっていた」「帰宅後は普段より飲食量が増し睡眠が深かった」等が確認された。以上のことから用具開発は成功し、子供の主体的な運動面、健康面等に有効であることが示唆された。研究期間全体を通じて実施した研究成果は、本研究で考案したスポーツ実施が、重度・重複障害児にとって心理面、生理面でも有効であったことが示唆された。また、本研究対象としたHBG重度・重複障害児スポ・レク活動教室「はなまるキッズ」のアダプテッド・スポーツの取り組みが、重度・重複障害児を持つ保護者、およびボランティア支援者にとって貴重な活動の場、研修の場として有効であったことが示唆された。そして、重い障害があっても、スポーツのルール、用具、指導法等を対象者に合わせて工夫することで、スポーツは誰でも可能となるということを、自らの実践研究で明らかにすることができたと考える。
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日本アダプテッド体育・スポーツ学会, アダプテッド・スポーツ科学
巻: 第21巻第1号 ページ: 印刷中