研究課題/領域番号 |
20K02450
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
島田 康行 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90206178)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高校国語 / 学習指導要領 / 書くこと / 授業改善 / 高大接続 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで長く指摘されてきた高校国語科の課題 ―すなわち「読むこと」の指導に比べて「話すこと・聞くこと」「書くこと」の指導が十分でないこと、所与の教材の読解指導が重視されるあまり、主体的な表現に関する指導が軽視されていることなど― が、今回の学習指導要領の改訂によって解決に向かうのか、高校国語科の授業はいかに変わるのか、という問いに答えようとする。具体的には、新しい学習指導要領が施行される前後の期間において、高校国語の授業の実態を継続的に観察することで、その改訂が授業のあり方にどのように反映されるのかを捕捉し、その趣旨の浸透状況を経年的に明らかにすることを目的とする。 これに関して、昨年度までに複数回実施した予備調査の分析結果をまとめ、1月に刊行した著書において公表した。また、ここで得られた知見を基に、後述の教員対象の質問紙調査を実施した。 本年度は、当初の計画にしたがって、一定の規模で継続的な調査を行い、授業内容の経年的な変化の捕捉を試みた。具体的には、3つの国立大学の新入生約230名を調査対象として、対象者が高校在学中に受けた高校国語の授業内容が、現行/新・学習指導要領の個々の指導事項をどの程度踏まえたものであったのかを尋ねる質問紙調査を実施した。現在、この回答結果の分析作業を進めているが、経年的な比較において、いくつかの項目で授業改善の兆しを指摘し得る特徴を見出している。 加えて、全国の高校国語科教員約100名を対象として、新しい学習指導要領や大学入試改革の議論が、自身の教科指導の内容や方法に与える影響について、質問紙調査を実施した。この回答結果も分析中であるが、進学校の教員を中心に、新しい学習指導要領や大学入試改革への関心が高まっていることが確認された。それらの要素が指導の内容や方法に与えた影響の具体的内容についても詳細なデータを得ることができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の一部に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた部分があった。すなわち、本研究はその全期間を通じて、新しい学習指導要領の告示を受け、また共通テストの導入を控え、すでに指導内容の見直しと授業改善に取り組む高校教員に注目し、全国で先進的な取り組みを試みる高校教員の協力を得て、授業実践を追跡して記録・分析を行うとともに、継続的なインタビュー調査を実施することで、彼らの意識がどのように変わり、それが授業改善にどのように反映されたのかを明らかにすることを企図している。しかし、昨年来の新型コロナウイルス感染症の全国的な拡大により、その予防の観点から、各地の高校を訪問しての実地調査は延期せざるを得なくなった。その分の旅費も次年度へと繰り越している。この点は予定通りの進展となっていない。 ただ、そうした中でも、研究への協力を引き受けてもらえる高校教員のネットワークの形成は順調に進み、感染症拡大状況の好転次第、授業実践の記録とインタビュー調査を遂行し得る環境は整備できている。 実際に、昨年度はそのネットワークを活用し、全国の教員約100名を対象とする質問紙調査を実施することができた。これは当初の計画にはなかったものだが、感染症拡大の状況下で、新しい形態で授業に取り組む高校教員の意識を窺うための貴重なデータとなっている。この調査は当初計画していた調査の代替となるのみならず、現在の感染拡大状況がしばらく継続した場合、本研究に新たな視点を加える可能性がある。 また、大学新入生を対象とする質問紙調査は、従来、各大学の教員の協力を得て進めているものであるが、各大学とも対面授業ができない中、オンラインでのデータ収集となった。難航が予想されたが、遅滞なくじゅうぶんな量のデータが収集された。現在、その分析も順調に進んでおり、この調査に関しては予定通り進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画を着実に推し進めていくものとする。大学新入生を対象とする質問紙調査はオンラインであっても質・量ともにじゅうぶんなデータが収集できる見通しが立っている。この実績を踏まえ、各地の大学教員の協力のもとに調査を継続しつつ、対象の大学を増やしていくことも検討する。一方、全国各地の高校を訪問し、教員の実践を記録し、インタビューを行う調査については、新型コロナウイルス感染症の収束状況次第では、別の方策を模索する必要がありそうだ。授業案や実践記録を提供してもらったり、オンラインによるインタビューを実施したりする手順を検討・準備する必要がある。 また、昨年来の社会状況が今後一定期間継続した場合、本研究には新たな視点が付け加わることになる。すなわち、対面授業を前提としない新たな形態による国語科の指導がいかに行われるかという点である。令和3年度以降の大学新入生対象の質問紙調査は、その実態の一端を、期せずして浮き彫りにすることだろう。それを新しい学習指導要領への移行や大学入試改革の影響と切り分けて析出するためには、新たな研究手法も必要となる。具体的には、高校教員を対象とする調査の内容・方法を再検討していくことになる。令和2年度に急遽実施した質問紙調査の結果分析を踏まえ、これを改善、発展させていくこととしたい。 要するに、本研究はもとより新学習指導要領施行前後の高校国語の授業がどのように変化するかを捉えようとデザインされたものだが、調査の手法にいささかの変更を加えることで、新型コロナウイルス感染症拡大による新たな授業形態が国語の学びに与える影響を捉えることを可能にすると考えられる。当面、社会状況を注視しつつ、その可能性を視野に入れて研究推進の方策を模索することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では、先進的な取り組みを試みる高校教員の授業実践を記録・分析し、インタビュー調査を実施するための旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症の全国的な拡大によって、各地の高校を訪問しての実地調査を延期せざるを得なくなり、その分の旅費相当額等を次年度へと繰り越すに至った。ただ、この間も高校教員ネットワークの形成は順調に進んでおり、調査再開のための環境は整備できている。 今後は、感染の収束状況を注視しつつ、実地調査の再開を検討する。ただし、引き続き実地調査が困難な状況が続く場合は、研究資料の整備やオンラインでの聞き取り調査に向けた通信環境の整備を先行して進めていくことも検討する。 現在、全国の高校では、対面授業を前提としない新たな形態による教科指導の試みがさまざまに行われている。本研究が計画する大学新入生対象の質問紙調査は、その実態の一端を補足できる可能性がある。この調査は感染拡大状況下でも可能であり、継続して実施していく。また、そこで得られる知見は、本研究に新たな視点をもたらすものであり、より正確な実態把握のために、高校教員を対象とする調査も加えて行いたい。令和2年度に実施した調査を踏まえ、その内容・方法をさらに発展させて調査を継続していく。
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