本研究の目的は、教員養成課程における学生の理想の教師像の特性とその形成過程を明らかにするとともに、「学び続ける教員」の基盤の育成を志向する教員養成スタンダードを開発することである。 教員養成課程をもつH大学の4年次生を対象に理想の教師像を調べた結果、「子供理解や子供との関わり」を基盤としながら、「授業内容・方法を工夫する」「生徒指導・学級経営・特別活動を工夫する」「自己の生き方・在り方を考える」「他の教師との協力関係を大切にする」といった要素が複合的に絡み合った教師像をもつ傾向にあった。 H大学の学生を対象に1~4年次までの教師像と資質能力観の変化を検討した結果、①教師像と資質能力観の形成過程は過去と未来を行きつ戻りつしながら変化していくこと、②教師像の変化の基盤には子供との関わりや子供理解が存在しており、体験の内容は多様であること、③過去の教育経験が連続的に保持されている過程とある出来事をきっかけにして非連続的に変化する瞬間があることが明らかになった。 令和4年は、養成段階で最小限身につけるべき資質・能力の調査(質問紙調査、1000人対象)によって得られた136件の記述回答をKJ法により分類し、最終的に39項目を設定した。令和5年度は、39項目を検証するために第二次調査(質問紙調査、全国小中学校2100人対象)を実施し、306件の回答が得られた。39項目について二項検定を施し、有意水準5%で有意差が認められた。これを踏まえ、39項目を8つの資質・能力の基準と39の資質・能力の指標に分類し、「教職に必要な基本的素養」と「児童生徒理解のための力」を基盤としつつ、「教科等の授業計画・実施・評価・改善のための力」「学級経営、生徒指導・教育相談、キャリア教育、特別活動のための力」等を複合的に絡み合わせて学びながら、「学び続けるための力」を身につけていく教員養成スタンダードを開発した。
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