ナラティブ交換の潜在的可能性として、能動的に他者と関わり相互尊重を働きかける人ほど質の高い対話ができているという点を踏まえ、COILによる活動先を含めたすべてのステイクホールダ間での互恵性の構築が重要であることを本研究により実証した。そして、ナラティブ交換はその中核を担うといっても過言ではない。COIL S-L の実践過程においては、活動テーマの選択や学生の認知と情緒的育成を促す教育手法の意図的な導入、活動先コミュニティパートナーも含む活動参 画者間の互恵的パートナーシップ形成が重要であることが明確になった。そのためには、協働する教員間においても目的の共有、相互理解、積極的協働が重要である。COILは海外とつながり共修するため、個々の参画者の個人的な問題や、社会情勢の変化にも対応していかなくてはならない。一つの協同体として共修するサービス・ラーニング活動では参画者の個々の課題が全体に影響するため、 その学びの視点を常にプロセスに置く必要がある。そこで、ナラティヴの交換は有効であると判明した。ヴァーチャルでの共修であっても、お互いを理解することで心理的距離が縮まりチームメンバー間の協働が促進された。本活動を通して学生の異文化間能力、対話能力、批判的思考スキル、デジタル・リテラシー、グローバルリーダーシップの向上も見られた。COILは共同から学ぶ取組みであり、互恵的関係性とそのパートナーシップを維持するための仕組みの構築が今後の研究課題となった。
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