研究課題/領域番号 |
20K02471
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研究機関 | 神戸常盤大学 |
研究代表者 |
伊東 美智子 神戸常盤大学, 保健科学部, 講師 (20756366)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会人経験 / 看護学生 / 臨地実習 / 経験学習 |
研究実績の概要 |
昨年度は当初の計画に基づき、社会人経験現役看護学生9名と入職4年未満の社会人経験看護師9名の合計18名に対して、各人3回合計54回のインタビューを実施した。インタビューは主に、前職のこと、看護職を目指したきっかけ、看護学生時代の学びの中でも特に臨地実習中について、聞き取りを行った。3回の聞き取りを重ねることで、聞き手にとっては1回だけでは十分に理解できなかったことを細かく尋ねることができた。語り手からは、語り切れていなかったことが随時追加されていった。なお、本研究は質的研究の中でも複線径路等至性モデル(TEA)を用いた。TEAはインタビューで聞き取った内容を図式化し、その図を聞き手と語り手の間におくことで相互理解を促す効果がある。なお、研究に取り掛かる前には研究倫理審査を通過した上で実施し、所属機関の長や協力者の同意を得た上で開始した。 その後、得られたデータの分析を進めていった。その結果、社会人経験後に転職して看護師を選職した理由を整理すると、高校卒業後にストレートで看護師養成機関に入学した学生との進学理由に違いがあった。それはその後、社会人経験学生が看護を学ぶ中で強い動機づけとなり、卒業までの学びを支えており、強みとして捉えることができると考えられる。 その後、臨地実習中の学びに着目すると、前職や過去の経験をそのまま活かして看護を学べることと、そうではないことがあることが分かった。後者を乗り越え、過去の経験を再構成して看護を学ぶには省察が不可欠であり、教員や指導者との対話によって省察が深まることが分かった。 以上について、学会等の場でポスターあるいは口頭発表を行っていった。参加者等より得られた示唆を加え、論文作成に取り組んだ。現在1本を専門誌へ投稿し、受理された(ホームページへの掲載も済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画では「2020年度は学会誌への投稿を目指す」までであったが、1本ではあるが論文の学会掲載まで至れたからである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画は、①2021年度は、論文化したものを含めて製本し、出版する。②他学会での発表やワークショップを企画し、本研究で得られた考察 を深め、次の発展を目指す。③その後の構想としては、得られた示唆をモデル校においてカリキュラム等に何らかの形で取り入れ、試験的に展開していた だき、その過程をモニターする。2021年度は、そのための準備期間とするというものであった。 しかし、新型コロナの影響で今後の取り組み方法を慎重に見極める必要がある。医療・看護の臨床現場への負担が叫ばれて久しい。その影響は当然、看護基礎教育にも影響を及ぼしている。早く研究成果の報告と今後の展開に向けて相談を進める段階ではあるが、ここは教育現場の状況を踏まえ、慎重に進める必要がある。 このことが研究者である私自身の勤務先でも同様に生じている事態である。遠隔での講義だけでは伝えきれない看護の内実を、演習や学内実習を通して学生たちが考え、掴み取ってゆく経緯を支援する責任が私自身にも生じている。これまでとは異なる状況の中で教育の質担保を諦めて研究に没頭することは本末転倒である。そのために、教材や人材を整えることも研究の進行を維持する上で欠かせないものである。職場とよく話し合いつつ、取り組んでゆきたい。 今以上にデータ分析の考察も深め、精度を上げる必要がある。それによって得られる成果をさらにまとめ、学会誌への投稿や製本化に向けた準備を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は2020年度開始の3年計画の内容で採択されているので、その予定で予算執行を進めている。 本年度はその2年目にあたるため、データ分析・考察における一層の深化を目指す。それにより得られた成果は、広く専門誌等へ公表するため、必要な手続き(英文翻訳業者による校正)も依頼しながら、形にしてゆきたい。 また、研究協力機関への成果報告も行ってゆきたいため、先方の事情も考慮し適切な形式での実施(Web会議の開催や製本化したものの贈呈等)に向けた準備も進める。
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