研究課題/領域番号 |
20K02481
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
安藤 聡彦 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40202791)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 公害教育 / 環境教育 / チェルノブイリ / 原発事故 / 記憶の継承 |
研究実績の概要 |
本研究は、「チェルノブイリ原発事故の最大の被害国」とされるベラルーシ共和国における過去30年あまりの教育と環境との関係性の変容(ここではそれを環境教育史と呼ぶ)を、とりわけ同国最南部にあり、ウクライナとの国境をはさんでチェルノブイリ原発と至近の距離にあるホイニキ市を中心として、明らかにすることを目的としている。 研究初年度にあたる2020年度は、コロナ禍で現地訪問が不可能となったため、以下の3つの作業を行った。1)チェルノブイリ原発事故史にかかわる文献や情報の収集、2)memorial museum や difficult history education にかかわる文献の収集・検討を通しての研究視点の検討、3)関係者(ホイニキ市民、ウクライナ国立チェルノブイリ博物館副館長)へのオンラインヒアリングの試行。 事故(1986年)から35年がたち、被害者支援や事故対応をめぐる議論とともに「歴史」や「記憶」という観点からチェルノブイリを語る議論も進んでいる。研究実施者は2019年の論稿でホイニキ市歴史民俗資料館の「チェルノブイリの悲劇」展示室について「公害記憶の継承」という観点から検討する必要性を論じたが、そうしたアプローチの必要性を再確認することになった。同時に、より大きな問題としては、あらためて「チェルノブイリ学」(メドヴェージェフ)の歩みを概観する必要性が示唆されたことにもなる。また、オンラインでのヒアリングによって、ウクライナのチェルノブイリ博物館では、コロナ禍のために全面閉館にはなりつつも、「歴史の伝達と環境教育が私たちの二大ミッション」として、オンラインツァーの仕組みを整え、求めに応じて実施していることが明かとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述のように2020年度はコロナ禍のために現地訪問を行うことができず、同時に研究実施者自身の立場の変更に伴い仕事のあり方が変わったこともあり、研究の展開は全く異なった形をとらざるをえないことになった。予定では、初年度にあたる2020年度は、これまで4回の訪問で得た資料をあらためて精査しつつ2回の訪問調査を実施し、研究対象地域であるホイニキ市の主要な関係者にあって調査目的を伝え、3年かけての調査のための詳細計画づくりを行い、とりわけ事故前のホイニキ市の教育-社会-環境の諸関係の構造の理解をすすめるための資料収集・ヒアリングを実施するはずのところであった。 上記の「研究実績の概要」で書いたように、実際には資料・文献の収集とオンラインでのヒアリングの試行に留まったのだが、とりわけオンライン・ヒアリングは様々な制約はありながらも工夫によってはある程度の作業も可能であることが分かった。少なくとも2021年度はひきつづき現地への渡航が困難であることが予想されるため、オンラインヒアリングを軸に調査計画を立て直し、作業をすすめていくことにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、ベラルーシの首都ミンスク市でのヒアリング環境の整備(調査協力者の確定、オンライン環境の整備、他)を行い、そのうえで調査をすすめていく。 当面、第二次大戦後のホイニキ市における学校史の概要の把握に努める。そのために、市内の学校教育並びに教育行政関係者の調査候補者リストを作成し、オンラインヒアリングを実施する。また、関係者への資料の閲覧・共有をお願いする。 同時に、引き続き当該分野に関連する情報や文献・先行研究の収集に努める。 この作業を実施してみて、どのくらいの達成がなされるのかの自己評価を年度末までに行うことにしたい。その評価結果によっては、研究期間を延長することも検討することにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では、2020年度に現地調査を2度実施し、旅費・人件費等を支出する予定であったが、コロナ禍のために1度も実施することができなかった。 2021年度も実際の現地調査は難しいものと考えているが、現地(ベラルーシ共和国ホイニキ市)でのオンライン・ヒアリング環境を整え、実地調査を進めていく予定である。 研究期間の延長をも視野に入れつつ、研究費を確実かつ効率的に使用し、結果を導き出していきたい。
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