研究課題/領域番号 |
20K02494
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
熊澤 恵里子 東京農業大学, その他部局等, 教授 (90328542)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 学問系統 / 農芸化学 / 農用化学 / ゲスマン / ストックブリッジ / クラーク / キンチ / 学理と実践 |
研究実績の概要 |
初年度はコロナ禍により国外調査を断念し、予備調査で収集済資料に「北大百年史」を加え、札幌農学校と駒場農学校の比較検討から日本の高等農学教育における学問系統解明へのアプローチを試みた。 札幌農学校はクラークと生徒達を中心とした人物史研究の蓄積はあるが、教育の実態ならびに東北帝国大学農科大学、北海道帝国大学農学部へと続く近代農学の教育研究機関としての学問系統に関する実証的解明は十分になされてこなかった。そこで本研究では、先行研究が開拓のための人材養成という設置目的とその後の管轄部署の変遷などを詳細に辿り札幌農学校の意義を論じているが札幌農学校から農科大学への系譜は見えてこないことに着目し、これまでの札幌農学校研究で見落とされていたもの、すなわち、近代農学教育の必須条件であるAgricultural Chemistry(農芸化学)の設置の有無、という点に辿り着いた。 Agricultural Chemistryは駒場農学校では英人農芸化学教師を迎え、農芸化学科を設置し学理と実践を体系的・実験的に学んだが、札幌農学校ではストックブリッジの提案にも拘らず1891年まで提議されることはなかった。これは北海道開拓という設置目的を背景とした佐藤昌介によるAgricultural Chemistryの解釈、「農用化学」によるところが大きい。またもう一つの要因として、御雇教師の教授力もある。予備調査で発掘したゲスマン宛クラーク書簡に、後にクラークの後任として来日するブルックスについて、教授職にふさわしく一層業績を積むように伝えていることから、適任者不足も一因であった。 米国は農芸化学においては後発国であり、ゲスマンのように大学での教授と農事試験場での研究を兼務する人物をドイツから招聘する方法を取ったと考えられる。 本研究の成果は、欧米農学導入期における農学高等教育の学統研究の足掛かりとなる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍において緊急事態宣言が出され、海外渡航ならびに国内移動も自粛となったため、夏春に予定していた英国・ドイツ現地調査を中止せざるをえなかった。また、秋に予定していた国際学会にも参加することができなかったため。 しかしながら、国内外の調査はやや遅れているが、予備調査の段階で収集した資料、ならびに、本年度収集、購入した資料の解読、分析、考察を行い、論文を学会誌へ投稿するなど、全体的な計画はほぼ予定通りに進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究2年目となる令和3年度も緊急事態宣言の延長などにより国外調査は自粛などの制約が予想されるため、年内は国内調査ならびにデータベースなどを活用した国外文献調査を行い、国外調査は2月から3月に集中して実施する予定である。研究計画の全容は予定通りであるが、コロナ禍次第で実施年度変更も適宜実施し、柔軟に研究を進めていきたい。 コロナ感染を避けるため、国内外の資料でも、デジタル収集に対応できるかどうかを現在検討中である。なお、研究室のデジタル環境の整備を速やかに進め、研究の推進を図りたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による緊急事態宣言などにより国内外調査を自粛したため。令和3年度春(2022年2月~3月)の国外の長期にわたる調査実施およびデジタル環境向上のために使用する予定である。
|
備考 |
東京農業大学農学研究科環境共生学専攻熊澤研究室 http://dbs.nodai.ac.jp/html/76_ja.html
|