研究課題/領域番号 |
20K02508
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
見城 悌治 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (10282493)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 留学生史 / 医学教育史 / 文化交流史 / 東アジア近代史 |
研究実績の概要 |
今年度は、おもに戦前期に中国医薬留学生を支援した「同仁会」に関わる研究を進めた。成果として、論文①「同仁会による医薬留学生への支援」(孫安石・大里浩秋編著『明治から昭和の中国人日本留学の諸相』東方書店、2022年3月)、論文②「日中戦争開戦前後における日本医学界の中国・中国留学生観―医薬支援団体「同仁会」の機関誌に見える言説から」『人文研究(千葉大学)』51号、2022年3月、論文③「『中華民国医事綜覧』から見る近代中国の医学者と留学歴(2)―欧米留学者を中心に―」(『千葉大学国際教養学研究』6号、2022年3月)、をまとめることができた。 論文①では、同仁会が1927年に発足させた「中国医薬留学生懇話会」と1930年に日本人医薬学生を交えた「中日医薬学生談話会」への発展的改組、およびその変更にともなう諸問題をを浮き彫りにすることができた。 また論文②では、1937年7月の盧溝橋事件を前後する時期の同仁会機関誌『同仁』に載った諸論考を分析するなかで、同仁会が「中国留学生支援」と「戦争の後方支援」という矛盾した課題にどう取り組もうとしたのかを明らかにした。 論文③は、同仁会が1935年に発刊した『中華民国医事綜覧』に掲載された医師の履歴から、「欧米留学者」の特質をまとめた。昨年度まとめた「中国人医師の日本留学者」と比較することで、日本医学界が、中国の医薬留学生教育に、どのようなスタンスで臨もうとしたのかの背景を、欧米留学者との対比で把握することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(2020年度)は、近代日本において中国留学生の支援をおこなっていた「日華学会」と「同仁会」に関する論文を前者を1本、後者を2本まとめたが、二年度目の2021年度は、「同仁会」研究に集中し、3本の論文を発表することができた。 昨年度の同仁会をめぐる論稿2本と併せ、計5本の論文をまとめた結果、同仁会が中国人医薬留学生に対し、どのような支援を行ない、そこにどのような問題が孕まれていたのか、中国において、海外で医学薬学を学んだ留学生の特質を、かなり明らかにすることができたためである。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は最終年度にあたる。本研究は、中国留学生全般の支援にあたった「日華学会」と医薬留学生支援にあたった「同仁会」の活動を、それぞれの機関誌分析などをするなかで、1930~40年代の留学生教育の「相互理解」と「軋轢」を明らかにすることを課題に掲げている。 それに基づき、この二年間で、先行研究が多いとは言えない同仁会の役割については、かなり明らかにすることができた。一方、日華学会については、見城自身を含め、多少の先行研究があるという事情を背景に、二年度目は同仁会研究に傾注していた事情がある。 最終年度は、改めて1930~40年代の日華学会機関誌『日華学報』を丁寧に読み解く中で、戦時下の留学生への対応を吟味し、それを同仁会の役割と併せ、本科研の課題により深く迫っていきたいと考えている。
|