研究課題/領域番号 |
20K02509
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
大森 直樹 東京学芸大学, 特別支援教育・教育臨床サポートセンター, 教授 (50251567)
|
研究分担者 |
大橋 保明 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (30387667)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 原発被災校 / 教育実践 / 教育実践記録 / 原発災害 / 放射線教育 / 子どもの生活の事実 / 3・11受入校 / 受け入れ教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、東北地方太平洋沖地震と東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、3・11)の学校における影響と課題について、教育実践記録の収集と分析を通して明らかにしようとするものである。第3年度の研究実績は以下となる。 1)原発被災校で原発災害と向き合った教育実践記録について、新たに62件を収集し、第2年度に編著『3・11後の教育実践記録 第2巻』に収録した30件と合わせて、計92件の目録を作成したこと。92件の中には、同一の原発被災校において複数の教育実践記録が作成されたものもあり、その重なりを整理すると網羅している原発被災校は51校だった。県別内訳は、宮城1校、福島43校、茨城4校、千葉3校。 2)以上の教育実践記録から見えてきたことの中には次のことがある。①子どもの被ばくを避けようとする取り組みが、避難区域の原発被災校(公立は65校)だけでなく、避難区域外の原発被災校(公立は2,281校)においても行われていたこと。家庭を単位とした自主避難、学校を単位とした子どもの集団避難(福島朝鮮学校のみ)、学校を単位とした保養の取り組み、教職員による放射線教育等。②避難区域と避難区域外の原発被災校の一部では教職員によって、原発被災下における不安と不信に直面した子どもの言葉に耳を傾けることや、子どもの本音を引き出す自由な表現の機会をつくることが行われていたこと。③避難区域の原発被災校の一部では教職員によって、原発災害下の子どもの生活の事実を新たな教育内容にして、生活の事実についての共感によって子どもの喪失感を埋めようとする取り組みが行われていたこと等である。 3)全国に避難した子どもが在籍した3・11受入校における教育実践記録(受け入れ教育の記録)の検証に向けて、3・11により震災前の学校と別の学校に通っている児童生徒13.065人(2018年5月現在)の拡がりを市町村等別に明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原発災害と向き合った教育実践記録について、体系的な収集と整理を進めて分析にも着手出来たが、国際情勢によりチョルノービリ原発周辺の現地調査を実施する目途が立たなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
チョルノービリ原発周辺の現地調査については、新たに行うことは見合わせて、これまで行ってきた文献調査と現地調査による知見を活かして国内の教育実践記録の分析に活かすものとする。「地震・津波被災校で自然災害と向き合った教育実践記録」と「原発被災校で原発災害と向き合った教育実践記録」について収集と整理と分析を進めてきたことをふまえ、「3・11受入校で自然災害と向き合った教育実践記録」と「3・11受入校で原発災害と向き合った教育実践記録」についてもさらに収集と整理と分析を進めて本研究をまとめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、収集した教育実践記録に関わる現地調査のための旅費と謝金が執行できなかった。パソコンによる遠隔会議を利用して調査対象者への面接調査も行ったが、現地調査を補うには限りがあった。令和5年度は、3・11受入校に関わる文献資料の収集・整理や、本研究成果の東京学芸大学特別支援教育・教育臨床サポートセンター防災学習室における公表等のため予算を執行する。
|