研究実績の概要 |
本研究は、ブータンをフィールドとし、フィールド研究と理論研究を往復する研究を目指す予定であった。ところが、2021年度も新型コロナウイルスのため、大幅な計画の変更を余儀なくされた。一切の渡航が不可能となったため、インタビュー調査は断念せざるを得なかった。 そこで研究の焦点を理論研究に移し、研究の理論的基盤を根底から問い直す研究を継続した。「モラル形成」に関する理論研究に着手し、前近代社会における「モラル形成」の知恵を学ぶべく、日本の思想における「自己形成の諸実践 self-cultivation」について研究を深めた。例えば、「「わきまえる」ということ-貝原益軒「よき程」を読み替える」『ひらく・5号』(佐伯啓思監修、A&F、2021年)202-211頁。あるいは、Self-Cultivation in Japanese Traditions: shugyo, keiko, yojo, and shuyo in dialogue、in: Moral Education and the Ethics of Self-Cultivation, (ed) Michael A. Peters, Tina Besley and Huajun Zhang, Springer、2021、pp. 61-78。 また、自らの問題関心を明確にしておくため、自分自身の「モラル形成」の記憶をたどる試みも開始した。雑誌『みすず』誌上にエッセイの形で発表し、検討を加えている(連載エッセイ「こころの記憶に語らせて」2020年8月から隔月、「1,散歩の中で」「2,目をオフに」「3,決められない」「4,祈る人々」「5,あなたの幸せが私の幸せになる」、「6,何もしてあげられない」、「7,やる気と気まぐれ」、「8,どちらがよいか」「9,なぜ神は」)。
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