研究課題/領域番号 |
20K02520
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
瀧澤 透 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (40389680)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | いじめ / 自殺 / 第三者委員会 / 新聞報道 / 形式知 |
研究実績の概要 |
いじめにより自殺した疑いがあると認められた場合は第三者委員会による調査が行われる。本研究はいじめによる自殺を防ぐための明示的な知識を得ることを目的に、第三者委員会のいじめ認定に関する新聞報道を用いて、いじめ自殺の定量的な分析を行った。方法は、学年や性別、曜日や月といったデータをオンラインの新聞記事から得た。調査期間は2012年度から2020年度までの8年間であり、分析の対象は小学生、中学生、高校生である。結果は以下のとおりである。確認ができたものは小学生5例,中学生45例,高校生は22例の合計72例であった。性別では小学生が男子2人,女子3人、中学生では男子26人(59.1%),女子18人(40.9%),高校生では男子14人(61.9%),女子8人(38.1%)であり,中学生と高校生ともに男子が約6割と多かった.学年別では中学生では2年生が20人(44.4%),高校生で2年生が11人(50.0%)と,いずれも約半数を占めていた.月別では7月が12件と最も多く,曜日では水曜日が16件と多かった。自殺の学年差について,いじめ認定の有無別にχ2検定を行った.その結果,中学生では1年生が103人中13人(12.6%),2年生が180人中20人(11.1%)と多く,3年生が283人中12人(4.2%)と少なく有意差が見られた。残差分析を行うと3年生(AR=3.26:p<0.01)のいじめ認定の自殺死亡数が有意に少なかった。 本研究によって,いじめが関連した自殺の多い性別や学年,月や曜日がわかった。また,自殺予防における「形式知」となる情報を単純集計やグラフによって示すことができた。学校の内外にあるいじめの疑いがある児童生徒の危機対応においては,図表や説明文で明示できる「形式知」を導入することが,現状として個々の経験に頼らせている教員の心身の負担を軽減させると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度はデータを1年分追加し、また、新たな分析項目(曜日)を加えて分析を行い、論文を大幅に書き直し学会誌に投稿した。その結果、年度末の3月28日付で原著論文として受理され、令和4年7月に掲載されることとなった。また、この研究に付随する研究として12月に学会で口頭発表を行っている。これらのことから研究はおおむね順調に進展していると評価できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、掲載された論文の内容をベースに、啓発普及を主目的とした比較的平易な文章を、教育・福祉関連の各専門誌へ投稿を行う。さらに、いじめ自殺は毎年、発生しており、また第三者委員会報告の新聞記事も、かなりの頻度で報道されていることから、データの更新や蓄積および再分析を継続して行っていく。続編となるより精緻な研究を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
比較的、感染状況が落ち着いていた12月は東北地方内での学会出が可能であった。しかし、全般的にはコロナ禍の影響から国内学会への出張がかなわなかった。令和4年度は学会発表のほか、英文翻訳料などを使用計画に盛り込みたい。
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