研究課題/領域番号 |
20K02521
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研究機関 | 山形県立米沢栄養大学 |
研究代表者 |
安部 貴洋 山形県立米沢栄養大学, 健康栄養学部, 教授 (50530143)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国分一太郎 / 生活綴方 / 鶴見和子 / 生成 / メディア |
研究実績の概要 |
今年度は、国分一太郎の戦後新教育と1970年代以降の文献を精査するとともに、社会学者として知られる鶴見和子の国分一太郎に関する論考を「生活」と「自然」という観点から考察し、論文としてまとめ、国分一太郎「教育」と「文学」研究会・紀要に発表した。 当初の予定では、今年度は戦後新教育に関する国分の文献を「言語と生活」という観点から精査し、考察を行う予定であった。だが、1970年代以降の国分の生活観、自然観の変化を明確にするために、戦後新教育期と1970年代以降の国分の文献をあわせて読み進めた。 また、社会学者として知られる鶴見和子の国分の生活綴方に関する論考を「生活」と「自然」の関係から考察し、論文として国分一太郎「教育」と「文学」研究会・紀要に発表した。鶴見は1952年、1985年、1994年等に国分の生活綴方に関する論考を発表している。1952年の論考において鶴見は、問題を「自己をふくむ集団」の問題として捉える生活綴方の姿勢を高く評価している。この評価は、1985年、1994年の論考においても変わることはなかった。だが1985年以降、自らの価値観を変化するための方法としての「概念くだき」、1994年以降は自然と一体化することを主張する国分の自然観を高く評価している。鶴見の「概念くだき」の評価は言語を観念と事物が浸透する場として捉えるメディア論 (今井康雄)、 自然観の評価は自然との十全な関わりを展開する「生成」論 (矢野智司) と深く関係しているように思える。これらのことを論文としてまとめ発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように、本研究をより効果的に進めるために、戦後新教育と1970年代以降の国分の文献をあわせて読み、国分の生活観、自然観の変化を考察してきた。 また、鶴見和子の国分の生活綴方に関する論考を「生活」と「自然」いった観点から考察し、論文としてまとめ、国分一太郎「教育」と「文学」研究会・紀要に発表した。この論文は、1970年代以降の国分の生活綴方と現代教育学におけるメディア論 (今井康雄) 、「生成」論 (矢野智司) との関係性を示唆し、1970年代以降の生活観、自然観の変化を明らかにすることを目的のひとつとする本研究にとって、今後の見通しを与えるものとなった。さらに、この論文では、これまでほとんど論じられることのなかった国分の「概念づくり」が国境を越えた連帯を生み出すことに鶴見が言及していることを明らかにしている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、戦後新教育に関する国分の文献の精査と、その考察後に教育の現代化に関する国分の文献を精査、考察する予定であったが、「研究実績の概要」でも述べたように、国分の生活観、自然観の変化を明確にするために1970年代以降の文献とあわせて読み進める。国分の戦後新教育に関する文献の精査、考察が終わり次第研究会等で発表を行う。 また、研究計画では3年目以降に予定していた1970年代以降の国分の自然観、生活綴方のメディアとしての側面に関する考察を進め、まとまり次第論文として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国分一太郎・生活綴方関連図書の購入と研究会等への参加を予定していたが、購入済みの文献等を中心に考察を進め、新型コロナ感染拡大の影響のため研究会が中止となったために、次年度使用額が生じた。予定していた図書の購入を進めるとともに、研究会等の参加のために使用する。
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