• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

人間綴方と生活綴方における「自然」の再考

研究課題

研究課題/領域番号 20K02521
研究機関山形県立米沢栄養大学

研究代表者

安部 貴洋  山形県立米沢栄養大学, 健康栄養学部, 教授 (50530143)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード国分一太郎 / 生活綴方 / 新教育 / 現実探求 / 生成 / 抵抗
研究実績の概要

本研究の目的は、国分一太郎 (1911-1985) の人間綴方と1970年代の自然観を考察することにある。戦後高度経済成長以降の子どもの生活の変化は、子どもに生活をありのままに書かせようとする生活綴方に大きな影響を与えたといわれる。だが、1970年代の生活の変化は生活綴方による子どもの現実探究をより活性化し、さらに子どもの生活を労働や有用性といった狭い視点から解放する側面をもっていたのではないか。そして、これらの可能性を示唆しているのが国分の人間綴方と1970年代の自然観ではないのか。これらのことを本研究では明らかにする。
当該年度は、国分の『新しい綴方教室』(1951年)に子どもの現実探求を考察している。考察の結果は戦後初期の国分の生活綴方が〈言語=メディア〉観 [今井康雄 2009] に立ち、高度経済成長期における子どもの生活の変化が子どもに書かせるべき生活の喪失という側面にとどまらず、生活という軛からの解放という点において子どもの現実探求を活性化させる可能性を示唆しているように思える。また、子どもの現実探求が子どもの綴方をありのままに受け入れつつも高い世界観から問いかけようとする教師の態度、そして綴方が生まれることへの教師の「よろこび」を背景としていること、さらにこの教師の態度が生活綴方を新教育の国民形成と隔てていることを論文としてまとめ、研究会紀要に発表した。この考察の結果は、新教育との関係において国分の生活綴方の独自性を示すとともに、〈新教育の地平〉(今井康雄)にとどまるといわれる現代教育における生活綴方の可能性を示唆するものであるように思える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当該年度は、国分の戦後新教育批判や「教育の現代化」、そして「人間綴方」に関する文献収集を行い、戦後新教育批判と「教育の現代化」に関する考察を論文としてまとめ、研究会紀要等に発表する予定であった。国分の戦後新教育批判に関しては論文としてまとめ、新教育との比較から生活綴方の独自性、現代における生活綴方の可能性を示唆することが出来たが、「教育の現代化」に関する考察を論文としてまとめることができなかった。

今後の研究の推進方策

1960年代における「教育の現代化」、1970年代の国分の「人間綴方」に関する文献収集と考察を行い、研究会紀要等に論文として発表する。特に「人間綴方」に関する国分の論考自体が少ないため国分一太郎研究会、日本作文の会全国作文教育研究大会等に参加することで情報収集を行うこととする。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は文献収集費用と旅費が予定よりもかからなかったためである。文献収集に関しては、すでに入手済みのものが多かったこと、また文献そのものが見つからなかったため当初の見込みよりも少ない額となっている。旅費に関しては、国分一太郎研究会、日本作文の会全国作文教育研究大会がオンライン開催であったり、また開催地が比較的近くであったことから交通費、宿泊費等がかからなかったことが理由としてあげられる。
次年度使用額は文献収集費用と旅費として使用する。まず、1970年代以降の国分の文献を中心に収集を行うための費用とする。旅費に関しては、例年参加している国分一太郎研究会、日本作文の会全国作文教育研究大会に参加するとともに、必要に応じて他の学会等に参加する費用とする。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 生活綴方の生成と新教育への抵抗2024

    • 著者名/発表者名
      安部貴洋
    • 雑誌名

      「教育」と「文学」の研究

      巻: 12 ページ: 1-7

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi