研究課題/領域番号 |
20K02534
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齋藤 直子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (20334253)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 他者の受諾 / アメリカ超越主義 / ソロー / エマソン / フラー / 哲学実践 / 国際対話 / 孤立のための教育 |
研究実績の概要 |
移民の排斥に見られる異質性の排除や、外国人恐怖症、ヘイトクライム、ひいては政治的対立などの根底にある政治的感情としての恐怖は、今日の世界において信頼と友情に根ざす民主主義の理想を脅かしている。負の連鎖を断ち切り他者との相互信頼の関係を築き直すことは、民主主義の実存的課題であり、哲学の実践的課題である。本申請研究は、他者との肯定的な関係を築き直すための哲学実践に向けて、ソロー、エマソン、フーラーの19世紀アメリカ超越主義をもとに、他者の差異化と互換性に根ざす「承認」(recognition)の政治学の限界を乗り越え、他者と「諾」という肯定に基づく関係を結ぶ「受諾」(acknowledgment)への思考様式の転換を図る。欧米との国際的な哲学対話を通じ、アメリカ超越主義が、他者の受容を通じて個の単独性に向き合い相互の自己信頼を高め合う「孤立のための教育」として広義の政治教育や道徳教育で果たす現代的意義を解明する。 今年度は、大学論についての国際共著にアメリカ超越主義に関わる英語論文“The Twilight of the University”が出版され、査読付き国際ジャーナルEducational Theoryに、他者の受諾と哲学の女性性に関わる英語論文 “Bridging Gender Divides: Towards Transcendentalist Feminism”が出版された。パリ第一大学主催の国際会議(オンライン)、the Association of Philosophy and Literatureの年次大会(オンライン)、アメリカ教育哲学会年次大会にて、エマソンやソローの超越主義と完成主義についての発表を行った。これらの出版活動と国際対話を通じ教育と哲学の国際ネットワークの拡充が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナウィルス感染により、年度の前半は海外渡航ができなかったが、オンラインの国際会議やワークショップでアメリカ超越主義に関わる招待講演や発表を行った。年度の中盤以降は、イギリスおよびアメリカにて対面で国際会議に参加した。その結果、当初の目標を超えて、アメリカ超越主義の現代的意義を解明する研究が着実に遂行できている。 【具体的達成状況】 1. アメリカ超越主義に関わる論考が国際共著にて出版された。2. エマソン、ソローのアメリカ超越主義に関わる共著英語論文が審査受理され国際学術誌に出版された。3. 境界を超えた他者の受諾に関わるアメリカ超越主義の英語論文が国際学術誌に出版された。4. アメリカ教育哲学会での審査受理論文発表やイギリス教育哲学会およびミラノ大学での招待講義を初めとして数々の国際対話に従事し、国際ネットワークの進展を推進することができた。5. アメリカ哲学促進学会のホームページ、および『スペクテイター』誌にインタビューが掲載され、国内外での研究の認知度を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 海外共同研究者との英語共著の出版を行う。 2. 海外での学会が対面を再開しているので、来年度は、アメリカ教育哲学会、イギリス教育哲学会、アメリカ哲学促進学会、国際教育哲学者ネットーワク等に論文を投稿し現地で発表する。国際ネットワークの進展を図る。 3. 本研究のテーマを発展させて、英語での単著出版企画につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染状況の拡大により予定した海外渡航ができなかったため。
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