研究課題/領域番号 |
20K02538
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
櫻井 佳樹 香川大学, 教育学部, 教授 (80187096)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教養 / Bildung / 変容的学習 / Transformative Learning / 日本 / ドイツ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本における「教養」概念の成立と展開を明らかにするとともに、「教養」概念の可能性について考察することである。その際、ドイツにおけるBildung概念の受容を観点とする。 2020年度はドイツにおけるBildungを巡る近年の議論を整理した。教育哲学の分野では、Koller(2012)が示したようにBildungのメルクマールを「人間の世界関係及び自己関係の根本的形状の変容」として捉える見方が隆盛を示してきた。一方こうした捉え方は,変容的学習Transformative Learningとして、インターナショナルな世界にも広がりを見せている。例えば、Anna Laros, Thomas Fuhr and Edward W. Taylor(2017)は、変容的学習Transformative Learningと教養Bildungの同質性を論じている。元来筆者は2020年度にThomas Fuhr教授(フライブルク教育大学)を訪ねる予定であったが、新型コロナウイルスの蔓延のため断念せざるを得なかった。その一方オンラインでのドイツ教育学会年次大会や関連学会に参加することを通して知見を集め、近年のドイツにおけるBildungとりわけTransformative Learning を巡る議論を整理するための研究資料の収集を行った。 日本的「教養」の成立において、ドイツ的教養Bildungがいかに受容されたかの比較研究は、櫻井佳樹(2015)「『教養』概念の比較思想史研究-教育学の基礎概念をめぐって」櫻井佳樹(2020)「戦前期日本における教養(Bildung)概念の成立と展開」等がある。本研究はそれらをさらに進展させようとするものである。 なお櫻井佳樹(2020)「フンボルト『陶冶(人間形成)理論』研究の評価と展望」教育思想史学会『近代教育フォーラム』を著した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの世界的蔓延のため、2020年度に計画していたThomas Fuhr教授(フライブルク教育大学)の訪問や国立ベルリン図書館等の訪問による資料調査ができなかったためである。オンラインやネット通販を等して著作の購入や情報収集はできたものの、十分とは言えない面もあると思われる。2021年度以降に状況が回復した場合は、ドイツへの渡航を実現する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では、日本における「教養」概念の成立過程に関する研究として和辻哲郎に取り組む。和辻哲郎は、旧制一高を経て東京帝国大学を卒業し『ニーチェ研究』(1913)を著した後、『偶像崇拝』(1918)を発表している。そこで、Bildungの意味で「教養」概念を使用した。本年度は1913年から1918年にいたる時期の和辻を取り上げ、とりわけニーチェ研究からの教養概念への影響関係について解明する。 なお、2020年度から2021年度に繰り越したドイツへの旅費を、日本並びにドイツにおける新型コロナウイルスの蔓延状況や渡航可能性を判断することによって執行する。そのことによってThomas Fuhr教授(フライブルク教育大学)や国立ベルリン図書館等への訪問によって2020年度に実現できなかった資料調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界及び日本国内における蔓延状況のため、2020年度に計画していたドイツへの渡航費ならびに国内における資料収集のための旅費を執行することができず、2021年度に繰り越した。2021年度のコロナの収束状況やワクチンの接種状況などを勘案しつつ、2021年度は旅行計画を実現したい。
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