研究課題/領域番号 |
20K02541
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
吉田 敦彦 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (20210677)
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研究分担者 |
森岡 次郎 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (10452385)
池田 華子 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (20610174)
西村 拓生 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (10228223)
永田 佳之 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (20280513)
河野 桃子 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 講師 (10710098)
孫 美幸 文教大学, 国際学部, 准教授 (40755493)
曽我 幸代 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (40758041)
青木 芳恵 帝京大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80708040)
福若 眞人 四天王寺大学, 教育学部, 講師 (50844445)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ホリスティック教育 / オルタナティブ教育 / 〈教育X福祉〉四象限マップ / 二軸直交モデル / ケア / 多様性 / 多文化共生教育 / ESD |
研究実績の概要 |
本年度の研究は、「オルタナティブな教育」と「教育のオルタナティブ」に関するホリスティック教育学の枠組みによる研究を通して、「ホリスティック教育/ケア学」という新たな学的領域を構築する端緒を得ることを目的とした。 【課題A】オルタナティブ教育と公教育に共通する「ホリスティック志向」に関する研究については、次の研究実績を得た。研究代表者は、第7回多様な学び実践研究フォーラムにおいて、公教育とオルタナティブ教育のもつ志向を原理的に対照させて「義務教育「2本立て法制度」ー普通教育の機会を確保する2つの原理」と題した発表を行った。研究分担者の孫は、単著『多文化共生教育ーホリスティックな学びを創る』を公刊した。研究分担者の森岡は、オルタナティブ教育における「多様性」概念を問い直す論考「「多様な学び」の「多様性」をめぐって 」を『教育(特集 もう一つ(オルタナティブ)の教育をもとめて)』誌に掲載した。その他、研究分担者の曽我や永田による、ホリスティック志向をもつユネスコ・ESD(持続可能な開発のための教育)に関する複数の論文、等の成果を得た。 【課題B】教育のオルタナティブとしての「ホリスティック教育/ケア」の学理論的研究については、次の研究業績を得た。研究代表者は、教育と福祉・ケアの独立でも融合でもない連関を捉えるための理論的視座として、論文「〈教育×福祉〉四象限マップの双眼的視座─教育と福祉の視差を活かした連携のために」を『基礎教育保障学会』に発表した。また、日本ホリスティック教育/ケア学会公開研究会において、「教育のオルタナティブ」という観点の意義、「ホリスティック」という形容しうる研究の一つの理論枠組みとしての「二軸直交モデル」に関する発表を行った。その他、研究分担者の西村や福若による、京都学派の哲学をホリスティックな理論によって解読するための基礎研究、等の成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究代表者によって、継続してきた「オルタナティブ教育」の法制面に関する原理的研究をまとめるとともに、新たに「教育のオルタナティブ」という観点を明確化して、「教育」概念のオルタナティブな外部である「ケア」や「福祉」との連関、「ホリスティック」と形容しうる研究の理論枠組みに関する提案を行い、「ホリスティック教育/ケア」の学理論へ向けた基礎研究を進捗させることができた。その成果を踏まえ、パンデミック下のためオンラインであったが2度にわたる研究分担者との研究会を開催し、集中討議によって分担者全員の今後の研究テーマの設定を行った(研究テーマと概要は一覧表になっている)。したがって、成果の公刊はまだ一部に限られているが、9名全員が共通の視座と各自の個別テーマをもって「ホリスティック教育/ケア学」の総合研究をスタートさせる初年度の目標は達成することができた。ただし、それぞれの研究テーマを組み合わせて構造化しようとしたときに、補完すべき研究テーマは何か、それをどのように共同研究していくことができるか、そのような体系的な検討は今後の課題として残されている。
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今後の研究の推進方策 |
1.7月までは、【課題A】に関わって、特に公教育とオルタナティブ教育に共通するESD(持続可能な開発のための教育)実践に焦点を当て、ホリスティック・アプローチのもつ意義を研究討議する。研究代表者=吉田がモデレーター、研究分担者=曽我が司会、同=永田の他、環境教育学会、開発教育協会のリーダーを登壇者に得て、日本ホリスティック教育/ケア学会の大会シンポジウムを開催し、その成果を集約する。2021年度学会誌で報告予定。 2.8月もしくは9月に、2020年度に9名の研究分担者が各自設定した課題に基づく研究進捗を共有し、それら相互の有機的な関係性および共通する理論的志向を探求するための合宿研究会を開催する。【課題B】で設定した「ホリスティック教育/ケア学」の学理論を生成する端緒を見出すための集中討議である。 3.研究代表者=吉田は、4年間計画の前半が終わる年度末を目途に、『教育のオルタナティブ―ーホリスティック教育/ケア学に向けて』(仮題)と題し、既発表の拙論を本研究課題と関連づけて編纂し、単著書の公刊をめざす。それをもって、後半に「ホリスティック教育/ケア学」の生成に向けた集中的な共同研究への地歩を固める。 4.年度末には、ふたたび全ての研究分担者とともに研究合宿を行い、中間総括と残る後半2年間の研究計画の再確認・再検討を行う。「ホリスティック教育/ケア学」という一つの学的領域が成立しうるとすれば、それは如何なる研究の総合的な所産としてなのか、何らかの展望を得たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
スタートアップの2020年度、必要な図書・資料(ベースとなる共有図書を含む)やオンライン会議関連資材を購入した物品費を中心に使用したが、旅費は大幅に支出減となった。理由は、ひとえにコロナ感染防止対応で、予定していた対面でのキックオフ研究合宿が不可能だったためである。 それをオンライン会合でカバーしてきたが限界があり、分担者全員が一堂に会しての集中討議の必要が高まっている。2021年度、それが可能になった上半期のはやい時点で、繰り越し分の旅費を使用して実現したい(8~9月を予定)。加えて、年度の終盤にもう一度、当初より予定していた4年間の中間総括を行う研究会を次年度助成金を用いて行う計画である。
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