本研究は日本統治下の台湾人児童が公学校入学後の「就学状況」を学籍簿記録などの学校文書を通して明らかにした調査研究である。旧公学校所蔵学校文書を調査することで児童の卒業、中退、落第状況、進路などを具体的に捉えられ、学校が所在する地域の住民構成、環境や文化、産業等の社会構造が公学校運営にどのようにかかわっていたかについての解明ができた。今回の研究成果は今後の公学校教育の実態解明にも貢献できると考えている。 本研究のメンバーは代表者1名、分担者1名、研究協力者1名の3名である。研究期間で実施した全体の研究成果について、2020~2022年度の成果(ブックレット1冊、論文3本、学会発表1回)に加え、2023年度は論文2本、資料紹介1本、学会発表1回、科研費研究成果報告書1冊の実績があった。最終年度に作成した「科研費成果報告書」は、「第1章 日本統治期台湾公学校・国民学校の学籍簿」「第2章 植民地統治期における児童の就学-新竹州旧港公学校を中心にして-」「第3章 高雄州龍肚公学校の学籍簿と就学状況」「第4章 新竹州旧港公学校の学籍簿と初期の就学状況」「第5章 台南州媽祖廟公学校の創設と初期の就学状況」「第6章 学籍簿からみた地方農村地域の公学校児童の学習状況]」の計6章によって構成され、新竹州旧港公学校『学校沿革誌』の復刻及び学籍簿関連の資料も収録された。この報告書は国会図書館など国内の図書館、研究機関および研究者のみでなく、中文のレジメを添え、協力してくださった台湾の現地の学校関係者、台湾の大学及び研究機関にも送付し、成果を広く公開している。
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